最速155キロも目指すは「軟投派」 ドラフト上位候補右腕が掲げる理想とは
スピードガンとの勝負は“卒業”、「9回を27球で終わらせるのがテーマ」
高校生の頃も、大学の下級生の頃も、馬場の話を聞いていると、どこかスピードガンと勝負している節があった。そこを“卒業”し、この1年はスピードにこだわりを持った中で次のステップに向けて大きく羽ばたこうとしていた。そんな中、今年は打者との対戦に入り込みすぎないよう、もう1人の自分をスタンドに置いたという。冷静にマウンドの馬場皐輔を見つめる、もう1人の馬場皐輔は「マウンドに上がっていると、熱くなって押したくなる」欲望の抑止力となった。それが無駄なボール球を減らし、丁寧な投球ができるようになった要因だ。
この日も、「スライダーでカウントを取れなかった」と見るや否や、直球とスプリット主体のピッチングに変えた。東日本国際大がスプリットに合っていなかったこともあり、「変にスライダーにこだわる必要はない。スプリットとストレートでうまくコースを突いて投げ分けられた」と納得の表情。その日の状態や相手との相性に応じて変幻自在の投球ができたことはこの秋を象徴していた。
身長180センチ、体重90キロの体格から繰り出す直球の最速は155キロ。その数字が一人歩きしているが、実は縦横のスライダー、フォーク、スプリット、カーブ、カットボールにチェンジアップと変化球が多彩な右腕だ。だから、「力投派に見られるんですけど、永遠のテーマは軟投派」と言い、「力投派と言われるんですけど、自分の中では常に軟投派を目指したいと思って投げています。自分は常に軟投派になりきって投げているので」とサラリ。そして、「あとは、9回を27球で終わらせるのがテーマ」とも。そんな投手像を語る目が輝いている。
富士大との決勝は天候により24日になった。その2日後には、いよいよ運命の日を迎える。その時を、チーム初の明治神宮大会出場を決めて待てるか。「コンディションはきちんと整えておきたいと思います」。まずはドラフト会議前最後の公式戦に集中する。
(高橋昌江 / Masae Takahashi)