混戦の2018年ペナントレース、前半戦を「得失点の波」で解析【セ編】

ベイスターズの得失点推移グラフ【図表:鳥越規央】
ベイスターズの得失点推移グラフ【図表:鳥越規央】

大量失点多いDeNA、打線の得点力に改善ない阪神

◯横浜DeNAベイスターズ

 4月上旬に8連勝し、昨年日本シリーズに進出した勢いが持続していよいよリーグ制覇もあるかと思われたスタートダッシュでしたが、その後は波に乗り切れず一進一退を繰り返しながら後退するといった状況のペナントレースとなっています。

 そして特筆すべきは交流戦以降ずっとブルーゾーンが続いていること。交流戦ではパ・リーグ相手に5連敗を含む10敗を喫し大きく負け越し。そして交流戦後は防御率5点台と投手陣が波に乗り切れてない状況となっています。

 しかしながら、交流戦後の戦績は13勝18敗と負け越しは5つ。そこまで真っ青な星勘定というわけではないのです。このブルーゾーンが続いている要因は、大量失点による敗戦の試合が目立つということ。交流戦以降2ケタ失点はなんと6試合。

6/27 阪神6-16
7/1 広島1-15
7/10 中日8-13
7/22 阪神7-11
7/23 中日4-11
7/27 広島1-10

 その一方で勝つときは僅差での勝利が多いため、平均失点が平均得点を上回る時期が多くなるという現象が起きているのです。

 筒香、ロペス、宮崎の攻撃力を活かすべく、2番にソトを配置したり、そしてオリックスより移籍の伊藤光によるキャッチャーの攻撃力向上を図ったりして、チームの得点力を向上しようとする姿勢をみせています。

タイガースの得失点推移グラフ【図表:鳥越規央】
タイガースの得失点推移グラフ【図表:鳥越規央】

◯阪神タイガース

 全体的にブルーゾーンが多くを占めている状況です。防御率3.99はリーグ2位、FIP3.66、被本塁打68はリーグ最少で、相変わらず投手力に定評はあるのですが、平均失点が4.45でリーグ3位なのは、やはり守備力に難がある証拠。グラウンドに飛んだ打球をアウトにする割合であるDER0.674は12球団最低。また本塁打52、チームOPS0.676はリーグ最低と、長年の課題とされている得点力の改善は今季前半でも見受けられませんでした。

 本来、セイバーメトリクスで打線の核と位置付けられている1、2、4番のOPSが全て0.7以下というのも、全体の得点力低下に大きな影響を与えているものと思われます。6月に月間OPS1.098を記録した陽川尚将が4番に座り、主軸として期待されましたが、7月に入りOPS0.468と大ブレーキ。代わって7月に再登録されたロサリオが月間OPS0.972で前半の遅れを取り戻しつつありますが、ただ7月の得点圏打率が0.083とチャンスに打てず。結局、福留、糸井頼みの打線であることには変わりがないようです。

 8月はドーム球場での試合が15と多く、「死のロード」と言われた頃に比べれば恵まれた環境での試合ができるということで、ベテランの多いチームにとってはこれを浮上のきっかけにし、雨天中止となった代替試合による連戦が予想される9月への布石を置いて欲しいところです。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY