「完敗、力負けだった…」日本Sで実力差を感じた広島が必死で過ごす秋季キャンプ
「分析して語るのは簡単だけど、何を言っても負け犬の遠吠えになる」
「結論から言うと、すべてにおいて完敗、力負けだった。シーズンを通じて戦い、その中で目指してきたのは頂点でした。足りないものがあれば、それを補うためにいろいろと準備したし、試した。シリーズも厳しい戦いになるのは分かっていた。だから、コンディション、データなどを含め、選手、そして我々スタッフ一同、やれることをやった。しかし、ソフトバンクがそれを上回った。それが現実」
準備を怠らなかった自負がある。その分、負けてしまった場合にはどこかに理由を求めたくなってしまう。しかし、廣瀬純コーチは、理由は地力不足以外にないと語ってくれた。
「周囲から甲斐の肩が強いのは分かっていたのに、盗塁以外の他の作戦はなかったのか、という声も聞こえる。タイミングはセーフだったかもしれないのに、送球がちょうどタッチしやすい場所に行ったこともあった。でも、こういうことも含めて勝負だし、それを上回ることができれば勝てる。色々と敗因などを分析して語るのは簡単だけど、我々の役目ではないし、それこそ何を言っても負け犬の遠吠えになってしまう」
日本一。届きそうで届かない、こぼれ落ちてしまった大きな夢だった。
目の前にある高すぎる壁に阻まれた。しかし、そこから目を背け、回り道しても何も変わらない。広島は今、それをぶち破ろうと必死になっている。
「ここから選手がどう考えて何をやろうとするか。気持ちが弱くなって、勝てないかも、となってしまうのか。絶対に勝ち取る、登り詰めると思ってひたすらにやるのか。これからが重要なんです」
広瀬コーチがコメントしている横を、汗びっしょりの選手たちが通り過ぎる。疲労が蓄積し休みたくなる時期だが、気持ちを奮いたたせて踏ん張る選手を温かく見守っていた。
「この秋のキャンプは本当に大事。時間に余裕があるので、他の選手がやっていて良さそうなものも試せる。あっという間に年は明けてしまうから、時間に余裕はないんですよ」
安部の手には常にバットが握られており、話が終わるとすぐに素振りを始めた。
(山岡則夫 / Norio Yamaoka)
山岡則夫 プロフィール
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。