「今は口だけの選手が多い」―現役引退の攝津正が体現したエースの“美学”
昨季限りで現役を引退、沢村賞も獲得した右腕の言葉から見せる意志の強さ
攝津正は、決して目立つ存在ではなかった。しかしプロ入り後は、エースとして強豪チームの礎を築き上げてきた。正確無比な投球術はもちろん、この男の大きな武器は器は確固たる意志の強さ。沢村賞獲得時と、引退会見時のコメントにブレがないのでもそれがわかる。
「決して長くない選手生活だったが、本当に満足はしている。後悔も、悔いもなく終わることができた」
「活躍した部分もあるし、ここ最近はダメだった。いろいろな選手の気持ちになって、物事を考えられるようになったのかな」
実働10年、通算282試合登板、79勝49敗1セーブ73ホールド、防御率2.98。数字だけを見れば、時間が経てば埋もれてしまう投手なのかもしれない。しかし、球界を代表する強豪チームとなったソフトバンク、その過渡期を支えた戦士として忘れられない一人である。
攝津は、秋田経法大付高(現明桜高)から社会人・JR東日本東北を経て、2008年ドラフト5位でプロ入り。社会人入りして指名可能となってから6度目のドラフトで、26歳にしてようやく指名を受けた。
新人からセットアッパーとして欠かせない存在に。70試合を超える試合に登板し1年目に新人王、デビューから2年連続で最優秀中継ぎ投手となる。11年の先発転向後は15年まで5年連続2桁勝利をマーク。12年には最多勝と最高勝率のタイトルを獲得、沢村賞を受賞した(17勝、勝率.773)。最優秀中継ぎ投手と沢村賞の両方に輝いたNPB史上初の存在、まさに日本を代表する投手となった。しかしここ3年間は計21試合登板で4勝8敗と結果を残せず(16年2勝、17年0勝、18年2勝)。昨季終了後に球団からの戦力外通告を受け、退団、12月29日に引退を決断した。