休部のピンチを実りある時間に 履正社女子野球部が取り組む「オンライン部活」
「休部の前よりも野球の知識が上がっていて、体のコンディションが整えられる集団に」
これを機に、今ではトレーニング動画や教材用の動画も自分で編集するという橘田監督。慣れない作業も「勉強させてもらってます(笑)」と前向きに捉える姿勢が、選手を惹きつける魅力の1つなのだろう。「直接会ってグラウンドで練習できることが一番」と再認識する一方で、オンライン部活にも大きな可能性を感じているという。
「例えば、1年生に伝えないといけない学校のルールや部活の決まり事は、もともと部活以外の時間でやっていたのでオンラインでも十分ですよね。あとは、サインであったりバントの考え方であったり、日頃グラウンド後で流してきたことを改めて確認するいい時間になっています。紙を配ったり、試合中に見て確認しておいてね、で済ませていたサインを、オンラインで私が実際に出して分かるのかどうか確認したり、このチームではどんな意識でバントをやっているのか確認したり。分かっている選手と、分からないけど聞けないなと思っている選手と、何となく差が出てしまっていた知識やセオリーを確認するためには、いい場だと思います。体力作りの日、知識向上の日、選手が主導で練習する日と、いろいろな使い方ができますね」
また、選手だけではなく、日頃グラウンドで時間に追われている監督・コーチ陣にとっても、互いの野球観を再確認するきっかけにもなっている。
「教材となる動画を編集しながら、指導者同士でもお互いに大切に思うことが少しずつ違っていることに気付くこともあります。スタッフにとっても考え方のいい整理整頓ですよ。普段のグラウンドでは、高校、中学生のクラブチーム、専門学校と3チームの練習をどう回していくかで手一杯で、それだけでスタッフ間の会話がほとんど終わってしまうんですよ。だから、指導者同士でも共通認識を作れるいい機会になっています」
グラウンドでの部活がいつ再開するか、先行きはまだ不透明だ。だが、それを嘆くのではなく、最大限に活用するのが橘田流だ。
「確かにグラウンドで集まって練習できるのが最高。でも、今度集まる時に、休部の前よりも野球の知識が上がっていて、体のコンディションが整えられる、時間をしっかり管理できる集団になっているといいなと、それだけを望んでいます。日々模索、日々発見ですね。立ち止まりながらも、今何ができるかを考えて、できることをやっていくことが大事。この先、『あんなこともあったよね』って笑える日が来ると思うので、今はお互い頑張っていければと思います」
休部期間が終わり、グラウンドで練習を再開した時、履正社高女子硬式野球部がどんな成長を遂げているのか、今から楽しみだ。
(佐藤直子 / Naoko Sato)