経済、治安悪化…命の危機に直面しても野球が好き 南米で働く日本人トレーナーの思い

国民の平均月収は8ドルくらい「配給もあるが、届かないことも多く、まだまだ生活できない状況です」

 18年は米国からの経済制裁の影響でチームが資金難に陥り、外国人スタッフを雇わないことになり、マガジャネスで働くことができなくなった。貸していた2ドルを隣人が返さないために殺し、空腹をしのぐためにその肉を食べる事件が起きるほど、国内の経済は落ち込んだ。

 19年にはMLBが全てのメジャー傘下の選手、スタッフに同国のウインターリーグに参加することを禁じたため(この規制は同リーグ終盤に解除)、マガジャネスからオファーを受けながらも、またも働くチャンスを逃した。

「今、国民の平均月収は8ドルくらい。でも米が1キロ2ドルもする。配給もあるが、届かないことも多く、まだまだ生活できない状況です」

 ここ数年は経済悪化の影響で、多くの国民は生活できなくなり、1割以上が海外に脱出した。球場で試合を観戦できるほど経済的に余裕のあるファンの数も激減しており、昨年の試合では多くの球場で空席が目立った。それでも本間氏は、野球を通じてベネズエラ国民に笑顔が戻るよう、今後もトレーナーとして同国の野球界をサポートしていきたいという思いが強い。

「国の経済や治安が1日も早く回復し、国民に野球を楽しむ余裕が出来るようになってほしいですね」。ファンの人たちがいつか球場に戻ってくる日が来ることを、本間氏は心から願っている。

(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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