中日・木下拓、大野雄の最優秀防御率のために描いた“禁断の手”「パスボールなら…」
閃きが生んだ9月26日の本塁打「直感的に次は必ずシュートが来る」
ひらめきと準備が見事に融合した試合もある。今度は9月26日。東京ドームの巨人戦。“一日一善”の第2弾はホテルのエレベーターだった。
「傘を入れるビニール袋が落ちていました。『よし! ヒーローになったら、この話をしよう』と思ったんです」
2対2で迎えた8回1死走者なし。カウント2ボール2ストライクで、打席の中にいた木下拓はひらめいた。
「直感的に次は必ずシュートが来ると思ったんです。大竹(寛)さんのシュートはテレビ画面で見る5倍くらい曲がります。だから、ハリハリ(完全に山を張る状態)でないと打てない。だから、思いきり左足を開いたんです」
打球はレフトスタンドへ消えた。喜びを大爆発させたいところだったが、まだ試合もシーズンも終わっていない。本音を悟られまいと、木下拓は広報に次のように伝えた。
「シュート。追い込まれていたので、何とかしつこくいこうと思っていました。うまく反応することができたと思います。もう気持ちを切り替えて、守備のことを考えます」
手の内を明かさないのも次の戦いへの準備だ。ヒーローインタビューではきっちり爆笑をさらった。
「今日、ホテルで朝食を食べた後、エレベーターで傘を入れるビニールが落ちていて、拾って捨てたので、神様が味方してくれたと思います。神様、ありがとうございました!」