苛立っても、涙を流しても… 広島ドラ3大道が入学前から監督室に通い詰めた理由
1年春のリーグ戦ではいきなり開幕1戦目で先発に抜擢
「頭を振るフォームが気になって、それは改善しないとコントロールもよくならないのでいじりました。でも、大道がずっと投げているフォームだから、なかなか直らない。その時点で自分の力が入る投げ方をしてきているから、修正すると、力が抜けるんですよ。『抜けているから、いいんだよ』と言っても、物足りないんですよ。みんな、そう。それに、球速が140キロ超えて多少の自信もあるから、『なんで俺、いじられないといけないの』というのもあるじゃないですか。最初は半信半疑。だから、そこを壊して、壊して、立て直す。選手が私を信じてくれるか。信じさせないといけないんですけどね、指導者として」
分かっていても体の動きは、そう簡単に変わるものではない。まして、最初は言われていることを理解しようとすることで精一杯。大道は頭の中がぐちゃぐちゃしてくる。できない自分へのイライラが募る。涙も、こぼれる。1月に18歳になったばかりの少年の限界を超えることは珍しくなかった。当時を思い返し、「ふてくさってんなぁっていうのが何回かあったよ」と正村監督は笑っている。
練習後にシャドーピッチングをして、翌日の練習でブルペンに入る。「投げている感じは悪くなかったんですけど、動画を見ると、違うんです」と思い返す大道。シャドーピッチングで出来た動きが、実際にボールを投げてみるとできない。その繰り返しだった。
だから、毎日、監督室をノックした。指摘する点は同じでも、どうやったら大道に伝わるか、正村監督も言葉を変えながら繰り返した。3月のオープン戦中の宿舎でもそれは続いた。
4月、リーグ戦が開幕。正村監督は開幕1戦目の先発に抜擢した。大道を夏の合同練習会で見た時からある程度、決めていたというが、入寮後の姿勢も評価した。相手はリーグ6連覇中(当時)の富士大だったが、大道は平然と投げた。
「まだリーグ戦のシステムも富士大がどういうチームなのかも分かっていなくて。それに、変な自信もあったんです」
後を受けた高橋優貴(現巨人)で逆転負けしたが、大道は5回1失点と好投。1年春は7試合で29回1/3を投げ、防御率1.84の成績を残した。