ダルビッシュやCY賞左腕を次々獲得… 斎藤隆氏が語る“変わり者”パドレスGMの真骨頂

パドレスのAJ・プレラーGMについて語る斎藤隆氏【写真:小林靖】
パドレスのAJ・プレラーGMについて語る斎藤隆氏【写真:小林靖】

口癖は「ディテール」、フロント内での白熱した議論を“演出”

 パドレスのフロント在籍時は日本でスカウティング活動もしていた斎藤氏が、プレラーGMの口から何度も何度も聞いたのが「ディテール(詳細)」という言葉だ。

「『ディテール』にはこだわっていましたね。どんなことでもいいから情報が大切。チームを作る上で、人間性という部分をかなり重要視していました。決していい選手だけを集めようというのではなく、今のチームに必要なのはどういうタイプなのかを考える。2018年オフにマチャドを獲得するか、(ブライス・)ハーパーを獲得するかとなった時、それを強く感じましたね。みんなが『どちらがいい選手だ』と議論している時に、プレラーGMは『どちらがうちのチームに合う? うちにはどちらが必要だ?』と聞く。いい選手でもチームに合わなければいらない。その正確な判断をするためにもディテールが大事なんですね」

 結局、パドレスはマチャドと10年3億ドル(約324億円)の大型契約を結んだわけだが、プレラーGMはフロントオフィスの全メンバーに意見を求めたという。もちろん、斎藤氏もその1人だが「僕にまで意見を聞いてくれた」と驚く。活発な意見交換と誰でも意見を言える環境作りは、プレラーGMの根幹をなすところでもある。

「人を叱っているところは見たことがないけれど、わざと議論が白熱するように仕向けるところがあるんです。フロント内でぶつからせることもよくあった。ミーティングの場でデータ組とスカウト組の意見がぶつかるように、あえて互いに質問を振り続けるんです。意見のぶつかり合いでミーティングがフリーズすることは日常茶飯事。徹底的に意見交換をさせることに、チームを強くする秘訣を見出しているのかもしれないとも思います」

 本拠地球場に人工雪を降らせてみたり、即席バスケットボールコートを設置して老若男女や障害者ら全ての人に解放したり、時には「日本人投手だけのブルペンが作りたい」と言い出したり……。常人の枠にはまらない発想力、行動力を持つがゆえ、変わり者と思われることも少なくない。だが、常にブレずに中心にあるのは「勝つためには何が必要か」という想いだ。

 GM就任1年目の2014年オフ、プレラーGMはマット・ケンプ、ウィル・マイヤーズ、ジャスティン・アップトン、ジェームズ・シールズ、クレイグ・キンブレルら屈指のトップ選手たちをトレードやFAで獲得するなど、ド派手な補強で球界の注目を集めた。だが、2015年シーズンを地区4位で終えると、惜しげもなくチームを解体。シールズ、キンブレルらをトレード放出する代わりに、タティスJr.、マニュエル・マルゴーらトッププロスペクトを獲得し、30球団で最下位を争うマイナー選手の層を、わずか数年でトップレベルへと押し上げた。

狙ったプロスペクトをトレードで獲得「一番評価されるべきところ」

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