「日本一になれると思うんです」 日本ハム変化の象徴“執念先輩”が声を出すワケ
新庄監督が作り上げた「誰一人座っていない」ベンチ
今川は札幌の東海大四高(当時)時代、夏の甲子園に出場するも代打要員。大学野球で出番を得たのも4年生になってからという、プロ野球選手としては異色のキャリアを持つ。“非エリート”だからこそ、試合で勝つために自分ができることを必死に考えてきた。社会人野球のJFE東日本入りすると、その積み重ねが花開いた。長打に特化した打撃スタイルと共に、チームを前向きにする声もまた戦力なのだ。
新庄監督はキャンプ中、自身のSNSへ選手たちの写真と共に、こう記したことがある。
「誰一人ベンチに座ってないです 野球を楽しんでるからこそ自然と前のめりになるんです 試合に出ていない選手が出てる選手を必死に観てる姿こそ今年のファイターズです」(原文ママ)
スマートなスターとして人気を集めた新庄監督も、チームを強くするには今川のような泥臭さが必要不可欠だと知っているのだろう。根っこは同じだと言ってもいい。
プレー技術を積み上げるのと、チームの雰囲気を変えることは同じように時間がかかる。後者の方がより難しいとさえ、言えるかもしれない。新庄監督が仕掛けた数々のマジックは、低迷が続く中で堆積した“淀み”を一掃し、チームをスタートラインに立たせた。若い選手たちは、これからも様々な揺れを経験するだろう。ただ再建への大きな一歩は、すでにこのキャンプで示せたのではないだろうか。
○著者プロフィール
羽鳥慶太(はとり・けいた)神奈川で生まれ、愛知、埼玉などで育つ。2001年道新スポーツに入社し、プロ野球日本ハムを12年間担当。WBCなどの国際大会、アマチュア野球、平昌冬季五輪なども取材する。2021年よりFull-Count編集部所属。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)