30年前にPL学園を完封 東海大相模の選抜準V右腕が伝えたい「甲子園」の意味

現在は浜松学院高で野球部監督を務める吉田道さん【写真:間淳】
現在は浜松学院高で野球部監督を務める吉田道さん【写真:間淳】

「楽しく生きる、社会で活躍するために野球をツールにしてほしい」

 浜松学院高で野球部監督を務めて10年が経つ。選手の成長を見る喜びを味わいながら、それ以上に指導の難しさを感じている。試行錯誤の連続。就任した当初から、大きく変えた指導方針がある。

「最初は『何で、できないんだ』と口に出していました。ただ、選手はわざと失敗しているわけではなく、自分が教えていないからできないんだと気付きました。高校時代の監督で、今は東海大甲府で監督をしている村中(秀人)さんから『子どもたちの目線に立っているか』と言われたことも指導方法を考え直す転機でした」

 監督に就任して3年を迎えた頃から、吉田さんは選手に失敗する理由を説明し、失敗しないための練習を伝えることに力を注いだ。選手を信頼し、練習や生活への自由度も広げた。練習メニューの大枠や狙いは決めるが、詳細は選手たちが考える。吉田さんは意図が伝わっていないと感じた時に指示を出したり、助言したりして軌道修正する。

 髪型や服装の方針も変えた。「好きで丸刈りにするのは良いのですが、ルールにするのはずっと抵抗がありました。選手がひたむきに練習していることも、野球を通じて心が成長していることも日々感じています。全てを自由にするのは責任放棄ですが、選手たち自らが考えて判断する自由は必要だと思っています」。3年ほど前に髪型を自由にし、土日の練習で学校に来る際の服装も選手に任せている。

 30年前の選抜で野球ファンの記憶に残る投球を見せた吉田さん。現在は監督として、聖地に憧れる選手を後押しする。ただ、選手に強調している言葉がある。「甲子園は目標であって、目的ではない」。吉田さんの財産は選抜で準優勝投手になったことでも、プロ野球選手になったことでもないという。「野球を続けたからこその経験値や出会いが今に生きています。勉強を頑張って武器にする人がいるように、選手には楽しく生きる、社会で活躍するために野球をツールにしてほしいです」。選抜準優勝投手は甲子園出場がゴールではないと知っている。

(間淳 / Jun Aida)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY