子どもたちの「勝ちたい」を最優先 少年野球の「脱・勝利至上主義」に潜む大きな誤解
育成を掲げる春日学園少年野球クラブ「全力を尽くして勝ちに行きます」
最近の少年野球の流行りをつくった指導者は、似ているようで全く違う“誤解”に危機感を抱いている。「脱・勝利至上主義」は勝利を目指さないわけではない。「楽しさ」は「楽」と同じではない。茨城・つくば市にある「春日学園少年野球クラブ」の岡本嘉一代表は「ルールの中で全力を尽くして勝ちにいく」指導方針を掲げている。
2013年に発足した春日学園少年野球クラブは、“令和の少年野球”の先頭を走るチームだ。怒声や罵声の禁止はもちろん、全体練習は土日どちらかの4時間。保護者のお茶当番もない。方針に賛同した全国の多くのチームが、練習方法や選手の育成方法を参考にしている。勝利至上主義からの脱却を掲げている岡本代表だが、誤解が広がっていると危機感を募らせている。
「子どもがスポーツをやる上で競争をさせない、勝利を目指さないのは意味がないのではないか」
プロを目指したい、体を丈夫にしたい、仲間をつくりたい。スポーツをする目的は様々ある。程度の差はあるが、選手は誰でも練習する。練習するからには上手くなりたい、試合に勝ちたいと思うのは自然だ。
ただ、子どもたちの勝ちたい気持ちを指導者が上回ってしまうと、「勝利至上主義」に陥りかねない。行き過ぎた勝利至上主義は指導者や保護者による暴言や暴力、子どもたちの怪我などにつながる恐れがあることから、最近は「脱・勝利至上主義」の風が少年野球界にも吹いている。