成長期の怪我はトレーニングで防げる 投球に重要な肩の筋肉を鍛える方法

怪我を予防するためのトレーニングを紹介【写真提供・慶友整形外科病院リハビリテーション科】
怪我を予防するためのトレーニングを紹介【写真提供・慶友整形外科病院リハビリテーション科】

肩のインナーマッスルを鍛えるには? 理学療法士がトレーニング方法を紹介

 肘内側側副靱帯再建術(通称トミー・ジョン手術)の権威である慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師は、野球上達への“近道”は「怪我をしないこと」だと語ります。では、成長期の選手たちが故障せず、さらに球速や飛距離を上げていくために重要なのは、いったいどのようなことなのでしょうか。

 練習中の投球数を入力することで肩や肘の故障リスクが自動的に算出されるアプリ「スポメド」を監修するなど、育成年代の障害予防に力を注ぐ古島医師。日頃から休養の重要性を訴え続けている一方で、怪我をせず高いパフォーマンスを発揮するためには体を鍛えたり、柔軟性を高めたりすることも必要だと語ります。ただ、実際にどのようなトレーニングやストレッチを行えば良いか分からないという選手や指導者、保護者がほとんどでしょう。特に、成長過程にある育成年代の選手が体を鍛えるには知識が必要になります。

 そこで「First Pitch」では、慶友整形外科病院リハビリテーション科の協力を得て新たな連載をスタート。古島医師と共に野球の現場にも足しげく通う同病院の理学療法士たちが、体の構造についての説明や研究に基づいたデータ、簡単にできるトレーニングやストレッチなども紹介していきます。初回の担当は貝沼雄太さん。テーマは「肩のインナーマッスル」です。

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 肩関節には腱板と呼ばれるインナーマッスル(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)があります。肩関節の筋肉は何層にも重なっており、腱板は最も深い層に存在する関節に一番近い筋肉。怪我をせず高いパフォーマンスを発揮するためには、深い層にあるインナーマッスルがしっかりと関節を安定させた状態にして、その他の層にある筋肉(アウターマッスルと呼ばれます)を力強く動かす必要があります。

 それでは、腱板のトレーニングはどのように行えば良いのでしょうか。

 一般的に、軽い負荷(チューブや軽いダンベル)を使用してゆっくりと行うことが良いとされます。筋肉は、力強く早く動かすための「速筋」と、早くは動けないものの持久力がある「遅筋」が混合して構成されていますが、インナーマッスルを構成する両者の割合を見てみると、棘上筋は46%、棘下筋は59%、小円筋は51%、肩甲下筋は62%が速筋であると報告されています(※1)。

 一方、アウターマッスルにおける速筋の割合は60%程度。インナーマッスルは関節を長時間安定させることを目的としているため,速筋の割合がアウターマッスルより低いことも納得です。

 インナーマッスルの棘下筋は投球動作におけるトップの位置を維持することに、肩甲下筋は最後に腕を早く振り切ることに関わり、競技レベルが高い選手ほどこの2つの筋肉が投球動作に大きく関与すると報告されています(※2)。いずれにしてもインナーマッスルは遅筋ばかりではありませんので、ゆっくりと行うトレーニングだけでは十分ではなく、様々な方法を組み合わせて行うことが望ましいことが分かります。今回はそのトレーニング方法を紹介しましょう。

▼参考文献
※1 Lovering RM et al. Fiber type composition of cadaveric human rotator cuff muscles. J Orthop Sports Phys Ther. 2008, 38(11): 674-680.

※2 Gowan ID, Jobe FW, Tibone JE, Perry J, Moynes DR. A comparative electromyographic analysis of the shoulder during pitching. Professional versus amateur pitchers. Am J Sports Med. 1987, 15(6): 586-590.

簡単にできる5つのトレーニングを紹介

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