162センチでも「プロになれた」 “最も身長が低い”元オリ選手が磨いた個性
オリックスで山本由伸、山岡泰輔らと同期だった坂本一将さん
「うちの子は背が低いから……」――。野球少年を育てる保護者が持つ悩みのひとつに体の小ささがある。元オリックスの育成選手・坂本一将さんは公称162センチと当時、最も身長の低いNPB選手だった。幼少時からチームで一番小さかったが名門・武蔵府中リトルで世界大会優勝、武蔵府中シニアで日本一を達成。浦和学院で甲子園出場。東洋大からセガサミーと名門を渡り歩き、プロになった。身長で悩んだことは「一切ない」と言い切る。小さくても“できること”を貫いたからだ。
坂本さんは2016年のドラフト会議でオリックスに育成4位で入団。その時の入団会見で身長が162センチと明言した。同期には山岡泰輔投手や山本由伸投手がいたが、当時のNPBで最も身長が低い選手として関心を引いただけでなく、他の選手に負けない“アピールポイント”を「生命力」と答え、誰よりも話題を集めた。
「生命力」という言葉はいかなる状況でも夢を叶えるまで“生き残る”という意味を示していた。坂本さんは強い気持ちをずっと持ち続けていた。東京・新宿の学童軟式野球チーム「淀四ライオンズ」で野球を始めた。ポジションは遊撃手だった。
「小さいからコーチに『ゴロを打て』と言われていたので、その次の球を思い切り、アッパースイングでボールを遠くまで飛ばしました。『話聞いているのか』と怒られたので、僕も『うるせえよ、体のこと言うんじゃねぇ』と言い返してしまいまして……大問題になってしまいました」
言葉の選び方は適切ではなかったかもしれない。それでも体が小さいことを指摘されることは納得がいかなかった。その後、きちんと和解をしたため嫌な思い出として残ってはいないが、身長にまつわる忘れられないエピソードとなっている。