「野球って限界産業」売上捨てて“自由席”復活 広島オーナーの狙い「今、一番心配」
自由席復活で「コミュニティが生まれる可能性が出てくる」
――コロナでいろいろ難しくなった。
「球場で知り合って、仲良くなって、またいついつ球場で会おうね、今度いつ来るん、あそこの売店で会おうね、センターのところで会おうねとか、そういうコミュニティの重要性ってあると思う。球場に何度も来てもらえるわけだから。コロナの関係で全部指定席にしていたけど、今シーズンからおそらく自由席を復活させる。売り上げ的にみれば、指定席の方が得なんよ。でも自由席を復活させることによって、コミュニティが生まれる可能性が出てくるじゃない」
――そういう発想は他球団にはあまりないかもしれません。
「そうだろうと思うよ、大都会とは人口が違うわけやから。広島県の人口は270何万。平日に来てくれる可能性があるのは、うちらで計算すると大体150万。それから考えればリピーターを増やさなければ駄目。東京あたりは周辺を入れたら3000万くらいおるか知らんけど、その中から5万人とかいう数字が出てくるわけ。ウチは分母が非常に少ないわけやからね」
――そういう中でも、かなりの観客動員になっている。
「でも野球って基本的に試合数が決まっている、球場のキャパも決まっているから限界産業なんだよ。限界のところをどれくらい満たすかというのが、興行的にいえば、一番重要なところ。入場券の値段を上げれば、売り上げが伸びるかもしれないけど、広島の人と東京の人が思う金額の感覚って全然違うからね。そこはしっかり考えながらやらないといけない。値上げもそうそうできるものじゃないと思っているけどな、ワシは」
――これまでに、その限界のところ、MAXまで行ったということですね。
「すべてがグッズまでがね。入場者もそう。運が良かったということだろう。新しい球場ができて、2016年、2017年、2018年と優勝もできて。広島も燃えたしね」
――また優勝して燃えないといけない。
「もちろん、そう。だけど、お客さんは同一じゃないわけやね。カープ女子と言われていた子たちが、今30を超えているとか、そういう可能性もあるわけじゃない。その子らが等しく来てくれればいいんだけど、また違う年代の観戦の仕方が出てくるわけで、それにも対応していかなければならない。今度はまた違う形の、違う人たちを対象にしながら“天”を目指さなければいかんってことやね」
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)