会社経営、1人で営業の今「資料持ってプレゼンに」 監督退任から4年…挑戦を恐れぬ「絶対的一番」の原動力|THE KEYWORD 井口資仁 #3

  • 佐藤直子
    佐藤直子 2026.04.21
  • MLB
「生きている限り、何かに対する挑戦は続く」と語る井口資仁氏【写真:増田美咲】「生きている限り、何かに対する挑戦は続く」と語る井口資仁氏【写真:増田美咲】

唯一無二の道を切り拓いた井口資仁氏が考える「挑戦の定義」

 日米通算21年の現役生活を終えた後は、ロッテの監督としてチーム再建に努めた井口資仁氏。2022年を限りにユニホームを脱いでからは、解説者として活躍の場を広げながら、全国各地へ足を運んで野球の普及に尽力する。これまで様々なチャレンジを重ね、唯一無二の道を切り拓いてきた井口氏が考える「挑戦の定義」とは……。

「大きいにしろ、小さいにしろ、挑戦することを止めたら、自分の成長はないと思っています。学びたい、吸収したい、という思いは常に持ち続けていきたい。生きている限り、何かに対する挑戦は続くものだと、僕自身は思っていますね」

 現状に満足せず、自分の可能性に蓋をしないこと。新しいことに興味を持って、自分を成長させていきたい。そんな井口氏の「挑戦する心」の根本にあるのは、「まぁ他人に負けたくない、負けず嫌いが絶対的一番にありますよね」と笑う。

 小学生で野球を始めた頃は、兄やその友人に負けたくない一心で練習に励んだ。高校、大学、プロ、そしてメジャーの舞台に立っても、挑戦を止めない原動力は「負けず嫌い」の気持ちだった。

日米通算2254安打を放つなど輝かしい成績を残して引退【写真:産経新聞社】日米通算2254安打を放つなど輝かしい成績を残して引退【写真:産経新聞社】

 誰より1本でも多くヒットを打ちたい、少しでも遠くに打球を飛ばしたい、難しそうな打球をアウトに仕留めたい……。気が付けば、日米通算2254安打、295本塁打、224盗塁を記録し、ゴールデン・グラブ賞に輝くこと3度。ホワイトソックス時代に飛び出したダイビング捕球→スローイングは、ファンの間で今でも語り草になっている。

 負けず嫌いの気持ちは、もちろん今でも持ち続けている。

「ユニホームを着ていた時はその時にしかできないチャレンジをしていたけど、今はユニホームを着ていないからこそできるチャレンジがありますから」と話す眼差しには、より一層力強さが加わる。

「やっぱり、解説者としてもしっかり突き詰めていきたい。『井口の解説は面白くない』と言われるのは絶対に嫌。そこは負けず嫌いですから(笑)。予習・復習はきっちりやって、中途半端な解説はしたくないと思っています」

現場復帰への思い「もちろん、チャンスがあればまたユニホームを着たい」

 経験と知識に裏打ちされた解説で「分かりやすい」と評価を高める一方で、現在は無風・無音の冷暖房システムを取り扱う会社経営にも挑戦。「今はスーツ組ですよ。資料を持って、プレゼンにも出掛けています」と笑顔で明かす。

現在は会社経営も行う井口氏【写真:増田美咲】現在は会社経営も行う井口氏【写真:増田美咲】

「取引先の社長にご挨拶をしたり、1人で全国各地へ営業に出掛けてプレゼンしたり、今までなかった経験をしています。難しいけど、今までと違う社会が見えてきて、面白いですね。これも新たな挑戦。自分のスキルアップになるし、人の繋がりはさらに広がる。いずれは従業員を多く雇って、上場できるくらいまで会社を大きくしてみたいですね!」

 井口氏のビジネスマンとしての挑戦も楽しみだが、もう一度ユニホーム姿を見たいと願うのがファン心理だろう。ご心配なく。野球人としての挑戦心もまだ、火は灯り続けている。

「もちろん、チャンスがあればまたユニホームを着たいと思っていますよ。それは日本に限らず、それこそメジャーでコーチの勉強をしたり、ゆくゆくは監督にも挑戦してみたいという思いはあります。ただ、今は家族と過ごす時間を大切にしたいので、環境が整ったらぜひ挑戦してみたいですね」

 今季ドジャース傘下アリゾナ・コンプレックスリーグの監督に、ブルペン捕手やマイナーコーチなどを歴任した石橋史匡氏が就任するなど、米球界で日本人が活躍の場を広げている。「いろいろな人の新たなチャレンジが見えてくるのも、なんかこう、刺激になりますよね」。そう語る瞳の奥には、静かな炎が揺らめいている。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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