「環境を変えたい」アイデア社長は学童野球の監督 畳める打撃ネット誕生秘話
フィールドフォースにはグラブ工房やボールパークがある
訪ねると、野球少年にとってみれば夢のような場所と感じるだろう。東京・足立区。東武伊勢崎線・竹ノ塚駅から歩いて約15分。多くの野球アイデアグッズが開発されている「フィールドフォース」がある。打撃練習のできる「ボールパーク」が併設され、店舗ではアイテムも販売。折り畳んでバッグにしまえる打撃用ネットなど、驚きと斬新な野球ギアはどのような発想から生まれているのか。そこには同社の溢れる野球への愛情があった。
今は公園でキャッチボールすら思うようにできない時代。野球を取り巻く環境は激変した。ブレー人口も下降線を辿る。代表の吉村尚記さんは大学を卒業して野球メーカーに勤務。仕事で野球に携わりながら、少年野球の力になりたいという思いをずっと抱いていた。約15年前に独立し、会社を起業した。
「子どもたちは学校が終わってしまうと野球をやる場所がない。平日もろくに練習もできず、週末はチームの練習へ行く。自分のベストの表現ができない子に向かって、まだまだ怒鳴り散らす指導者がいる。そうなると『野球ってつまらない』と野球をやめる人が増えてしまう。そういう人をたくさん見てきたので、そこから変えていかなきゃダメだなと思いました」
倉庫だった場所に室内練習場を作った。今は「ボールパーク1・2」と2棟もある。マシン打撃に内野の守備練習ができる。その脇には保護者がゆっくりできるようにカフェも併設した。放課後や土日には子どもたちがバットとグラブを持って集まってくる。雨が降った日には、練習が中止となった少年野球チームの子どもたちで賑わう。
目線はいつも子どもたちと同じだ。3人の父である吉村さんは学童野球の監督も務めている。現在、大学生となった長男が小学校1年生の時に“パパコーチ”としてチームに所属。それから次男、三男とともにボールを追いかけた。三男は中学生になったが、今も指導を行っている。気づけばもう、こちらも15年が経とうとしている。
「私が作ったチームのスローガンは『思いやり元気野球』。どうしても、野球は難しいです。小さいボールを細いバットで打つわけなので、当たらないのは当たり前です。でも、子どもは失敗すると落ち込むんです。失敗も次へのステップということで、責めないことにしました。思いやりを持って、良いプレーをしたら、すごく褒め合うし、悪いプレーをしたら次、頑張ろうぜと思いやりを持って励ましています。そこで声をかけることで、元気が生まれる。子どもたちに会話をさせることを意識させています」
怒鳴ることはしないが、普段の生活において間違ったことや、ルールに反することが起こった場合はきちんと説明するために、叱ることもするが、そこには必ず子どもと野球への愛情がある。