パで増加傾向の一流の証“3割打者” 西武森、オリ吉田正ら巧打者はどこが凄い?
ロッテ荻野は10年目で初の規定打席に到達
○荻野貴司外野手(ロッテ)
荻野はプロ初年度から相次ぐ故障に苦しめられ続けていたものの、試合に出場できる状態ならば高い能力を有していることは広く認められていたところ。そして、2019年にプロ10年目にして初めて規定打席に到達し、その打率は堂々のリーグ3位となる数字を記録。その他の数字も軒並みキャリアハイとなる数字を残しており、34歳にして自己ベストのシーズンを送った。
2019年も故障で短期間戦列を離れた時期こそあったものの、ほぼ年間を通して一番打者としてチームをけん引。出塁率.371という高水準の数字を残し、チャンスメーカーとして安定した活躍を見せた。ただ、前年までは出塁率が.350を超えた年は2度のみと、卓越した選球眼を有していたというわけではなかった。34歳にして選球の質を高め、打撃面におけるさらなる成熟を示したと見てよさそうだ。
また、2019年に記録した三振数は、規定打席到達者の中では内川(ソフトバンク)に次ぐ2番目の少なさだった。荻野は通算201盗塁(2019年シーズン終了時)を記録した俊足の持ち主でもあり、ボールがフェアゾーンに転がるだけで相手守備陣にプレッシャーをかけられる存在でもある。あっさり三振で終わることが少ないということは、それだけ相手に重圧を与える機会が増加することにもつながっている。
先述した通り、なんといっても新人時代からずば抜けていたその脚力がつとに有名だ。故障の影響もあって盗塁王の獲得経験こそないが、通算の盗塁成功率は84.5%(2019年シーズン終了時)と極めて高い水準を維持している。脚力に加えて打率と出塁率も向上し、さらに三振も少ないという、まさにトップバッターにうってつけの才能を有している。現在、戦線離脱してしまっているが、2020年も規定打席に到達し、切り込み隊長として変わらぬ躍動を見せてほしいところだ。
○銀次内野手(楽天)
銀次は2013年と2014年に2年連続で打率.300超えを記録し、2015年も規定打席未満ながら打率.301を記録。若くして安定感抜群の打撃を見せていたが、2016年から3年間は打率.300未満に終わるなど、実力からすればやや苦しむ期間が続いていた。2019年に記録した自身4年ぶりとなる打率.300超えは、かつて首位打者を争った好打者にとって、久々に年間を通して本来の打撃を見せ続けられたシーズンと言えそうだ。
コンスタントに安打を積み重ねてチームに貢献するタイプの選手であり、本塁打数は2018年と2019年の5本が自己最多。分類するならば、典型的な短距離打者タイプと言える。その代わり、2019年の三振数は58個と、規定打席到達者の中では内川(49三振)、荻野(同56)、福田周(同57)に次ぐ、リーグ4位の少なさだった。この三振の少なさも、卓越したミート力による部分が大きいだろう。
三振が少ない好打者の中には、先述した内川のように好球必打の傾向が強く、あまり四球を選ばないスタンスの打者も少なくはない。しかし、銀次は三振の少なさに加えて、四球を選ぶ能力にも長けているのが特徴だ。2013年から7年連続で出塁率は.340を超えており、そのうち6度は出塁率.359以上という抜群の安定感を誇っている。長年に及ぶ三振数の少なさを考えれば、この出塁率の高さは特筆に値するはずだ。
2014年には当時オリックスに所属していた糸井と熾烈な首位打者争いを演じたが、最終盤まで続いた競り合いに惜しくも敗れて自身初のタイトル獲得はならなかった。あれから6年。元々有していた高い打撃センスに加え、より円熟味を増した杜の都の好打者が、再び首位打者争いに顔を出したとしても、何ら不思議ではない。