“隠し玉”が「噂になって」まさかの2位指名 ドラフトの歴史変えた想像超える急成長

中日時代の又吉克樹【写真:荒川祐史】
中日時代の又吉克樹【写真:荒川祐史】

正岡真二氏は中日スカウトを16年…最後に獲った選手が又吉克樹だった

 元中日内野手の正岡真二氏は17年間の現役生活、12年の指導者生活の後、1999年から2014年まで16年間にわたってスカウトを務めた。関わった選手が多い中、思い出深いのは四国アイランドリーグplusの香川から、2013年ドラフト2位指名した又吉克樹投手(現ソフトバンク)。「最後に獲った」選手だという。現在は名古屋北リトルリーグ総監督として子どもたちを指導している正岡氏は古巣・中日の巻き返しとともに、この右腕の活躍も楽しみにしている。

「最初は5位くらいで獲ろうとしたんだけどねぇ……」と正岡氏は笑みを浮かべながら振り返った。「又吉は(環太平洋)大学の時から見ていたんだけど、その頃は球が速くても棒球だった。それがね、独立リーグに行って変わったんだよ。大学の時とはボールの質が明らかに違った。シューッて伸びて……。それから追っかけだした」。当初は隠し玉で考えていたそうだが「あまりに良くなったもんやから噂になって、よそ(他球団)も見だしたんだよね」。それで2位指名になったという。

 又吉は1年目から大活躍した。67登板で9勝1敗2セーブ24ホールド、防御率2.21。主にセットアッパーとして入団から3年連続で60試合以上に登板。4年目の2017年シーズンでは先発もこなした。「俺が最後に獲った選手なんだけど、あれはヒットだったよね。(サイドスローで)上から投げるよりも長くできる。それも頭にあったんだよ」と正岡氏は目を細めた。

 又吉は66登板で3勝2敗8セーブ、33ホールドをマークした2021年オフ、独立リーグ出身選手では初めてFA権を行使してソフトバンクに移籍。正岡氏は「中日を出る時も、ソフトバンクに決めた時も電話がかかってきたよ。『なんでソフトバンクに決めたんや』と聞いたら『一番、お金が高かったからです』っていうんで『そうか』ってね」と笑う。「今年(2023年)も福岡で会ったよ。夜、飯食って話した」。65歳になった2014年で中日を退団した正岡氏にとって、最後に関わった又吉の活躍はうれしい限りだ。

元中日の正岡真二氏【写真:山口真司】
元中日の正岡真二氏【写真:山口真司】

現在は名古屋北リトルリーグの総監督「野球への恩返しだよ」

 現在、正岡氏は名古屋北リトルリーグ総監督。中日退団後、いくつかの大学で指導もしたが、今は子どもたちの指導に力を注いでいる。「やりはじめて1年くらいになるかな。週に1回か2回。監督の上の総監督。といっても手伝っているだけ。ノックとかはしないよ。若いヤツにやってもらう。見て、あれはああしろ、これはこうしろってな。お金は1銭ももらわずに、ボランティア。野球への恩返しだよ」と言い、とても楽しそうだ。

 少年野球の指導者として心掛けていることは「怒らないことだな。小さい子どもでもわかるような指導をしている。わかりやすく、できるように教えないといけないからね」と言う。「足はこういうふうにしてやるんだよ、下をこういうふうに使うんだよ。肘は下から上に上がるんだよ。下から上へ、肩はここまででいいんだよ。これ以上、上げる必要はないよ。そういう単純な基本をね。小さい子はやっているうちにどんどんうまくなっているよ」。

 現役時代は「華麗な守備の正岡」と言われる内野守備のスペシャリストだった。コーチ、2軍監督時代には現中日監督の立浪和義氏をはじめ、多くの選手を指導した。スカウト時代は鋭い目線で選手を発掘した。そんな中日一筋45年で経験したこともかみくだいて教え、子どもたちの成長に少しでも役に立ちたいと考えている。

 今、教えている子どもたちの中から甲子園球児やプロ野球選手も誕生するかもしれない。「そうなるかもわからんよな。楽しみだね」と微笑んだ。2年連続最下位からの大逆襲を目指す立浪中日、ソフトバンクでさらなる活躍が期待される右腕・又吉、そして名古屋北リトルリーグの子どもたちに熱い視線を送る。74歳の正岡氏はまだまだ現役の“野球人”だ。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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