妻に車内で漏らした「ダメかも」 ハッとした返事…引退覚悟が一転、首位打者争い

ロッテ、楽天で活躍した今江敏晃氏【写真:町田利衣】ロッテ、楽天で活躍した今江敏晃氏【写真:町田利衣】

今江敏晃氏は2010年に2度目の日本SのMVP、2012年からロッテ主将就任

 ロッテなどで通算1704試合に出場した今江敏晃氏は、2010年にキャリアハイの成績を残して自身2度目の日本シリーズMVPに輝き、2012年から主将に就任した。プロ12年目を迎えた2013年、132試合で打率.325、10本塁打、74打点の好成績を残してチームを3年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)出場へと牽引したが、この年は自身にとって「挫折」と「転機」があったシーズンだった。

 2005年からレギュラーに定着し、2010年に140試合でリーグ3位の打率.331、176安打の好成績を残した。主力としての地位こそ築いていたが、2011年、2012年と成績を落としており、「これからもう一歩、いかないといけない」と臨んだのが2013年だった。

 しかし開幕から絶不調。4月25日の時点で打率は.197と2割を切っていた。毎日試合に出ながらも試合後には夜遅くまで打ち込み、メンタルコーチにも話を聞くなどしたが、状態は上向かなかった。表情は、どんどん暗くなっていった。

「いよいよスタメンを外されるかもと思って『これはやばいな』と精神的にも追い詰められました。家族に野球の話をするのは好きじゃないんですが、ポロっと弱音を吐いてしまったんです。オフで車に乗っているときに、妻に『これだけやってダメならちょっとダメかもしれない』と言ったら、『努力しているのはわかるけど、もっとやれることがあるんじゃない? 今まで携わってくれた人に隅から隅まで電話をするとかしてみたの?』と言われてハッとしましたね」

「今まで助けてくれた人に頼るのもひとつというのを忘れていた」

 すぐに、携帯電話に番号を登録している人たちに片っ端から電話を掛けた。今まで教わってきた人、対戦相手ながら打撃論などを交わしていた人、体の治療に携わってくれた人……。何十人と話をする中で栗山巧外野手(西武)の結婚式で一緒になったトレーナーさんと話をして、一度見てもらうことになった。体の使い方の話が腑に落ちた。その翌日、試合に行くと久しぶりに気持ちのいい快音を奏でることができた。

「たまたまかもしれないですけど、そこから打率がバーっと上がって、最終的に首位打者争いをしたんです。打撃の感覚を戻すこと、球を打つことばかり考えていて、今まで助けてくれた、支えてくれた人に頼るのもひとつというのを忘れていた。妻に言われて視野を広げることができて、縁がつながってまた結果が出て、野球選手としてのキャリアを積むことができた年だったと思います」

 同年海外フリーエージェント(FA)権を取得したが、行使せずに2年契約を結んで残留した。数字で振り返れば輝かしい2013年も、実は“終わり”を覚悟した男がはい上がって手にした地位だった。

(町田利衣 / Rie Machida)

Restart_今江敏晃編

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