終わらない「あと1球」への執着 前田健太は「一流になる」…高卒1年目で確信のワケ|球界群像 川端順#19

広島時代の前田健太【写真:編集部】広島時代の前田健太【写真:編集部】

川端順氏が語る前田健太の1年目「何十球もかかる最後が素晴らしい」

 広島からメジャーにはばたいた日本投手は3人いる。FA移籍した2007年オフの黒田博樹投手、2008年オフの高橋建投手、そして2015年オフにポスティングシステムを利用して海を渡ったツインズの前田健太投手だ。元広島投手で、投手コーチ、編成部長も務めた川端順氏(徳島・松茂町議)はそれぞれに思い出があるが、とりわけ前田に関しては2軍時代のことを強烈に覚えているという。インプットされているのは「1球へのこだわり」だった。

 前田は2006年高校生ドラフト1巡目で広島に入団した。編成担当だった川端氏は「(前田担当スカウトの)宮本(洋二郎)さんが早い段階から『線は細いけどPL学園にいいピッチャーがいるんだよ』ってすごく推されていたのを覚えてますね。宮本さんに『今日はどこに行くんですか』って聞いたら『PL』。ほかの日に聞いても『PL』。それこそ、いつもPLに行っておられるのかと思うくらいだったですからね」。

 当時の川端氏はプロ担当だったため、1軍だけでなく、2軍にもよく顔を出していた。広島・廿日市市にある大野練習場、山口・岩国市由宇町のカープ2軍本拠地・由宇球場に足を運ぶことも多く、2軍だった1年目の前田健太が印象深いという。「背番号34をつけて、細い体の子がおるなって最初はそんな感じだったんですけど、ピッチング練習を見て、こういう選手が一流になるのかもしれないって思いましたね」

 川端氏はこう話した。「キャッチャーが『あと何球投げるんだ』って聞いたら前田は『カーブとスライダーとチェンジアップと真っ直ぐ、これだけです』って言うんだけど、すべていいところに決まらないと終わらないんですよ。自然と球数も増えていった。そんな何十球もかかる“最後”が凄いな、素晴らしいなと思いましたよ」。

食が細かった前田「昼からお茶漬けしていた」

 前田は2年目の2008年から背番号18をつけ、1軍の主力として活躍した。「1年目に見た時から守備もうまかったし、この子は凄い選手になると思ったけど、思った以上になったよね」。最多勝2回、最優秀防御率3回、沢村賞にも2回輝くなど、日本で十二分な実績を残して、メジャーリーグに旅立った右腕を川端氏もただただ称賛するばかりだ。

 そんな川端氏がひとつだけ心配しているのは食事量のことだという。「前田はね、食が細かったんですよ。昔は昼からお茶漬けしていましたから。『しっかり食べないかんよ』って言ったものです。黒田なんかは体がでかくなったけど、前田はいまだに本当にがっちりの体ではないよね。やっぱり、そこは食の細さなのかなぁって思って……奥さんが必死で栄養のあるものを食べさせているそうですけどね。頑張ってほしいね」。

 2021年にトミー・ジョン手術を受けるなど、怪我とも闘っている前田だが、今後はさらなる活躍が期待されるところ。メジャー移籍の際に編成部長として、送り出した立場でもあった川端氏も、海の向こうでの力投を楽しみにしている。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

球界群像〜川端順編〜

かつての新人王が議員に転身 63歳で新たな挑戦…政治に生かす“カープ魂”|球界群像 川端順#21黒田博樹の気遣いに仰天「顔が見えないくらい…」 感謝を伝えた9年後の“お返し”|球界群像 川端順#20ピッチャーゴロなのに「ウチに合うじゃないか」 鈴木誠也の本質見抜いた広島の慧眼|球界群像 川端順#18阪神から「帰ってくる気があるか」 打診した1本の電話…広島のスター“獲得”の裏側|球界群像 川端順#17新井貴浩のFA流出で「右目の辺りが落ちてきた」 補償で悩み顔面麻痺に…編成部の苦労|球界群像 川端順#16「小心者」が落合博満から聞き出した「強くなる方法」 黒田博樹を覚醒させた“金言”|球界群像 川端順#152球団から誘いも「情熱がなかった」 引退、コーチへ…ドラ1が選んだ32歳での幕引き|球界群像 川端順#14「思い出作り」と言われた重責過ぎるマウンド 日本中を欺いた…大一番の“奇襲先発”|球界群像 川端順#13現役生活縮めた「どんちゃん騒ぎ」 “幻の200勝投手”への思い「悪いことしたなあ」|球界群像 川端順#12首脳陣の勧めを拒否した右腕「もういいです」 断ったタイトルへの道…「行きません」|球界群像 川端順#11

RECOMMEND

CATEGORY