ピッチャーゴロなのに「ウチに合うじゃないか」 鈴木誠也の本質見抜いた広島の慧眼

広島時代の鈴木誠也【写真:荒川祐史】
広島時代の鈴木誠也【写真:荒川祐史】

野手を見る際は、初対戦の投手に対する対応力を重視する

 2007年高校生ドラフト3巡目・丸佳浩外野手(現巨人)、2011年ドラフト2位・菊池涼介内野手、2012年ドラフト2位・鈴木誠也外野手(現カブス)。3選手はいずれも広島の主力となり2016年からのリーグ3連覇に大貢献した。広島の元編成部長で徳島・松茂町議の川端順氏にとっても思い入れがある選手たちだ。同時に、カープスカウト陣の眼力のすごさを感じての獲得だったと振り返る。指名にたどりつくまでもいろんなことがあったという。

 川端氏はまず丸について、こんな話をした。「バッターが初対面のピッチャーと対戦する時は、絶対ピッチャーが有利なんです。フォームにタイミングを合わせていないし、球種も何があるかわからない。同じカーブでも違うじゃないですか。でも丸はどのピッチャーに対しても初対面でも自分のスイングができるんです。それを見るのは広島ではスカウトの鉄則らしいんですよ。よそは知りませんよ。これは(広島スカウト統括部長の)苑田(聡彦)さんに教わったんです」。

 さらにこう続けた。「長嶋(茂雄)さんとか、衣笠(祥雄)さんとか、何が素晴らしかったかというと、三振の姿が美しかったんです。自分のタイミングで振っているからタイミングを外されてもフルスイングができる。これも苑田さんに聞いて、そういうところを見るんだよって言われた。実際、丸を見たらそうだった。初対面のピッチャーとの第1打席、三振だろうが、凡フライだろうが、崩されたバッティングをしていなかったんです」。

 その部分も加味された上で千葉経大付・丸の指名は決まった。広島スカウト陣は野手チェックの際は必ずそれをやっている。「スカウトたちは『これ初対面か絶対聞けよ、練習試合でも監督に聞けよ』って言われている。大変だと思いますよ」。いい素材を見つけ出す裏には、そんな地道な作業もあるわけだ。

 菊池の場合は松本有史スカウトが「中京学院大学に面白い選手がいます。見にいきませんか」と言ってきたという。「どの選手かは聞いてなかったけど、練習を見たらすぐわかった。『あの選手やろ』ってね」。当時の菊池は遊撃手兼投手。「ピッチングは野手投げで、投手としては無理、野手だなと思った。何としても獲りたいと思ったから(中京学院大の)近藤(正)監督に『できれば、よその球団にはピッチャーの菊池を見せてくれませんか』って言ってみたりね……」。

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