幻となった「中日・松井秀喜」 担当スカウトが見誤った”B評価”も…突然のオーナー指令|球界群像 法元英明#16
巨人時代の松井秀喜氏【写真:産経新聞社】鈍かった松井秀喜獲りへの動き…九州担当の法元英明氏は危惧していた
急きょ、頭を下げに行った。中日元外野手で伝説のスカウト・法元英明(ほうもと・ひであき)氏は1992年8月25日の出来事をよく覚えている。当時は九州地区担当スカウトだったが、突然、ナゴヤ球場に来るように言われた。球場内の会議室で加藤巳一郎オーナーと中山了球団社長から直接、指令を出された。中日が大きく出遅れていた石川・星稜高のスラッガー・松井秀喜内野手獲り。その巻き返しが新たな任務だった。
法元氏は1987年から九州地区担当となり、そこでもまた逸材発掘に全力を注いだ。1989年には鹿児島商の左腕・井上一樹投手を猛プッシュしてドラフト2位で指名した。「ええ球を投げていたよ。きれいな投げ方やったしね」。自身も現役時代に対戦した400勝左腕・金田正一投手(元国鉄、巨人)を思い浮かべたという。「バッティングも良かったけどね。セカンドの上を越えたなと思ったら、そのままスタンドまで行ったのも見た」。
プロでは故障もあって投手として伸び悩んだ井上は1994年、本格的に野手転向。「(2軍打撃コーチの)飯田(幸夫)だったかな。『法元さん、井上をバッターに変えたいと思います』と電話がかかってきた。『本人はどう言っているの』と聞いたら『本人もそのつもりです』って。『ちょっと代わってくれ』と言って井上と話した。コソコソっと「お前、ええんか。俺は金田が目標やったんやけどな」って。それでも本人はやるって言ったんでね」
井上は1998年から外野手として1軍に定着した。時間はかかったものの、プロで成功し、法元氏もうれしい限りだった。“松井問題”が起きたのは、そんな井上がまだ投手として奮闘していた1992年だ。星稜3年の松井は、8月16日の夏の甲子園2回戦・明徳義塾(高知)戦での5打席連続敬遠で注目度もさらにアップ。高校1年時から活躍する左の大砲は、その年のドラフトの超目玉と目されていた。だが、中日の松井への動きは鈍かった。
球団オーナーに命じられた“松井担当”…先行する3球団に追いついた
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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