なぜTJ手術は増えている?…オリ岸田護監督に“禁断の質問” 坂口智隆氏が明かすケンタッキー事件とは【独占インタ延長編】

オリックス・岸田護監督(左)と坂口智隆氏【写真:加治屋友輝】オリックス・岸田護監督(左)と坂口智隆氏【写真:加治屋友輝】

対談企画「坂口智隆のやるかやらんか」、岸田監督に聞いたTJ手術

 オリックスの苦しい時代をともに支え、ファンから愛された岸田護監督と坂口智隆氏が、シーズン中に監督とインタビュアーという立場で顔を合わせた対談企画の“延長編”。気心の知れた球団OBだからこそ引き出せた、岸田監督の素顔と野球への深い愛情や現役時代の思い出話など、2人の特別な絆と熱い本音が詰まった貴重な対談をお届けする。

オリックスは直近2年間で10人(12件)がトミー・ジョン手術(以下、TJ手術)を受けている。TJ手術は、プロ、アマを含め身近な存在になっている。

坂口智隆氏

怪我でいくと、12球団でけっこうTJ手術が増えているじゃないですか。球団のトレーニングとかは置いといて、(考えられる)理由ってピッチャーからしてあるんですか?出力が上がったとか、トレーニングが変わったとか、身近になっているのか。

坂口氏から球界やファンのなかで賛否のあるTJ手術の話題を振られると、岸田監督は少し間を置き、ゆっくりと口を開いた。

岸田護監督

いろんな要因があって。出力が上がったのも当然そうやし、トレーニングのやり方が変わったのもそうやし。マウンドが硬くなってるのもそうやし。硬くなって傾斜があるところだから、それに合った投げ方にどんどんなっていく。そのかわり地面反力は強く受けられるから、球は速くなる。そういう投げ方もあるしね。TJ適用の範疇が広くなってきたっていうのもあるんじゃないかな。

坂口氏

ハードルが下がってきたっていうんですかね。成功実績も増えているし、ほとんどの投手が復活してますよね。『先にやっちゃおうか』(のケース)も増えていますよね。

岸田監督

少し前の時代は肘より肩を故障する人が多かったでしょ?これは個人的な意見になるけど、多分肘の痛みは我慢していたと思う。みんな肘が痛いけど、我慢して投げて庇ってこっち(肩)にきてんのよ、たぶん。

坂口氏

確かに肩の手術とかの方が多かった。じゃあ、もっと昔でも、TJ手術の適用が今と同じ感じなら、やる人は多いってことですかね。(その仮定で考えると)肩が壊れるまでに肘の手術をやってるんで、選手寿命としてはトータル的にいえば伸びてるかもしれない。

岸田監督

今の検査基準でやってたら、TJ手術をやる人は増えてたと思うよ。選手寿命が伸びてる可能性もある。1年とか1年半ぐらいのリハビリ(期間)も見てもらえるし。そこで、しっかりちゃんとしたトレーニングをやるからね。球速が上がる理由は、1年間しっかりとトレーニングできるってところもあるよね。

坂口氏

監督は現役時代に肘、痛めたことありますか?

岸田監督

ちゃんと痛めたことはない。だから(右肘を見せながら)まっさらやねん。手術の痕は一つもないよ。リハビリもやってフレッシュな状態になる。言い方は難しいけど、ポジティブな手術なのかもしれないよね。

ドジャースに移籍した山本由伸が怪我なく投げ続けている理由

ただ、チームや監督の立場からすれば計算していた投手が1年間いなくなる。エースの宮城大弥、山下舜平大らが欠けた投手陣のやりくりは頭を悩ますところだ。

坂口氏

こればっかりは分からないですよね。予想もできない。

岸田監督

TJ手術はほんまに急やからね。違和感や痛みが出て病院に行って『あ、トミー・ジョンです』って感じになる。今年のペータ(山下舜平大)にしてもそうやし、宮城にしてもこれまで投げ続けてきてるからね。今年も『大丈夫かな』と思ってたら、春先にポンと出てしまったからね。でもマックスに近いぐらいには戻るでしょうね。

坂口氏

個々で身長や体重、体格差があるからどうなんですかね?全員が必ず肘を痛めるってわけじゃないんかな。

オリックス時代の山本由伸【写真:荒川祐史】オリックス時代の山本由伸【写真:荒川祐史】
岸田監督

例えばうちで投げ続けて、アメリカでも投げ続けてる、由伸(山本)がないわけでしょ?あの出力を持ってて、あの身体のサイズで。そうなると、投げ方もちゃんと理由があると思う。由伸はうちにいる時からルーティンがあった。朝一からやる体操とかね。柔軟性もしっかり作って、動きもしっかり作って。(そういうことを)やっぱりやり続けてる。そこってめちゃくちゃ大事なところなんだなって改めて思いますね。

坂口氏

僕は一緒にやってないけど、準備やトレーニングはすごいって聞きますもんね。周りに流されない。やり通す、続ける力をもってますよね。あと、すみません、話が逸れてしまいますけど、今って膝やすねが汚れるピッチャーがいないじゃないですか、昔みたいな。あれはマウンドが硬いからですか?

岸田監督

マウンドが掘れないから。すごく簡単に言うと、柔らかいマウンドのとき、掘れるってことはどういう投げ方になるかって言うと…。

ここで、岸田監督は席を立ち、身振り手振りで過去と現在のマウンドの違いを説明。さらに自らマウンドの違いで起きる投げ方の変化を実演した。坂口氏にとっても贅沢な時間となった。

坂口氏に実演を通して説明する岸田監督(左)【写真:加治屋友輝】坂口氏に実演を通して説明する岸田監督(左)【写真:加治屋友輝】
坂口氏

こんな幸せなことある?柔軟とかも。マモさん(岸田監督)も柔らかかったもんね。なるほどね。これはお金取れる話ですよ。今、僕、ソフトボールや野球の試合もやってて投手もやるんですよ。ほんとに肩痛くて。

坂口氏も驚いた、岸田監督(右)の衰えぬ柔軟性【写真:加治屋友輝】坂口氏も驚いた、岸田監督(右)の衰えぬ柔軟性【写真:加治屋友輝】
岸田監督

それはもう四十肩、五十肩。(第1回で岸田監督が話していた、一発で肩が治る)あのクリニックに行ったら治るよ(笑)。

投手と野手、交わらない2人が親交を深めた理由とは?

TJ手術の話題から、岸田監督による投げ方の指導……その後、話は2人の出会いについて。よくチームメートでも投手と野手はあまり交わることはないと言われるが。

坂口氏

寮生って部分が大きいかも。当時は神戸にあって、妹尾軒作さん(岸田監督とドラフト同期)が面白くて。そこで繋がった。その人の部屋で集まって遊んでいた。あっ!スーさん(鈴木郁洋)とかも。可愛がってもらってたから。そこから釣りとかもやるようになって。

岸田監督

僕の大学(東北福祉大)の先輩やね。寮生活は懐かしいなぁ。

坂口氏

あとね、一番の思い出が宮古島。マモさん覚えてるかな。ゴンゾー(坂口氏と同期入団の横山徹也)と比嘉さん(幹貴・1軍投手コーチ)もいたんやけど。宮古島のケンタッキーに行ったの覚えてないっすか?春季キャンプの休みの日の朝から。ケンタッキー行って、普通にチキンとか昼飯食おうか、みたいな感じの始まりだったと思うんすよ。でも、みんなもうダラダラ食べてて。『おかわり、おかわり』って言ったら店のストックがなくなって。『いや、まだいける』とか言って食べてたら、たぶんマモさんが払ってくれたと思うんですけど。ケンタッキーで何万円も払って、挙句もう一回揚げてもらうっていうケンタッキー事件。宮古島中のケンタッキーがなくなったと思う。

岸田監督

覚えてる、覚えてる。チキンがなくなって、揚げてもらえませんかみたいな。あったあった。ちょっとお待ちくださいみたいな。まだ、それだけ若かったってことやわ。今は食べられないけど、たまにデリバリーで頼むのよ。なぜか食べられる風でいっつも8ピースパックぐらい頼んでしまう。

坂口氏

8ピース!? 僕でも3ピースですよ。何個食べるの?

岸田監督

頼んでまうねんけど、結局食べるのは2ピース(笑)

坂口氏

胸焼けてもうてるやん!でも、あれが一番の思い出。なんなら2014年の“10.2決戦”とかじゃなくて。宮古島のケンタッキー。今も店の扉に張り紙してるんちゃうかな。出禁ですって。

笑みを浮かべながら、現役時代の思い出を語る岸田監督と坂口氏【写真:加治屋友輝】笑みを浮かべながら、現役時代の思い出を語る岸田監督と坂口氏【写真:加治屋友輝】
岸田監督

いや、エグいって(笑)。それが思い出!?そんなん今でもなんぼでもできるやんか。それが俺との思い出なんかよ…。

坂口氏

来年、春のキャンプでもう一度、伺いますので。2027年シーズンを楽しみにしていますね!

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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