地域密着で「広島ガールズ」育成 代打職人が情熱注ぐ女子野球の“未来づくり”|球界群像 浅井樹#12

カープ・ベースボールクリニックコーチを務める元広島・浅井樹氏【写真:山口真司】カープ・ベースボールクリニックコーチを務める元広島・浅井樹氏【写真:山口真司】

浅井樹氏は、広島県中学生女子軟式野球選抜チーム「オール広島ガールズ」を指揮する

 広島カープは女子野球振興に積極的。女子小中学生が継続して野球ができる環境作りに力を入れている。元広島外野手で、現在はカープ・ベースボールクリニックコーチを務める浅井樹氏は2021年に中四国女子野球アンバサダーに任命され、昨年6月には広島県中学生女子軟式野球選抜チーム「オール広島ガールズ」の監督に就任した。「女子野球に関してもカープだからこそできることがあると思う」と張り切っている。

 今年8月17日から8月23日に京都府で「第8回全日本中学女子軟式野球大会」が開催される。「オール広島ガールズ」はこの大会に出場するため結成された選抜チームだ。昨年の第7回大会にも出場したが、初戦敗退。監督の浅井氏は新型コロナウイルスに感染してベンチに入れなかった。「出発前日に陽性反応が出てしまった。選手たちに申し訳なかったです。今年は何としてでも行かないとね」。

 もちろん、出るからには勝利を目指す。「楽しむのが一番なんですけど、勝てたらもっと楽しい。勝つために何かできたら、貢献できたら絶対楽しいはずですからね。女子もちょっとしたことを教えただけで、めちゃくちゃ上手になったりしていますよ」。

 今年はクラブチームの選手だけでなく、中学校体育連盟に所属している女子らにも声をかけているという。「女子が1人か2人しかいない中学校のチームにいる選手も集まりましょうってこと。女子だけで練習しませんかってね」。そんな交流の場となることも目的のひとつだ。

「昨年の(中学)3年生の9人中、8人が高校でも野球を続けてくれているんです。うれしいですよ。少なくとも高校までは続けられるような環境を整えたいと思ってやっていますしね」と言って浅井氏は目を細めた。そして「こういうのはカープだからこそできるんじゃないかと思ってます。ウチのいい部分って、地域にすごく密着していることもあるじゃないですか。女子野球も県民の人たちと一緒に頑張っていくという感じですかね」と付け加えた。

役立った1年目の留学経験「早い時期に知ったのは良かった」

 富山商から1989年ドラフト6位で広島入り。17年間の現役生活ではレギュラーに挑戦しつつ、代打の切り札としても結果を出し続けた。1軍、2軍、3軍のいずれも経験したコーチ時代。ベースボールクリニックコーチとして、現在は「カープ浅井打撃塾」や女子野球振興に携わっている。たくさんいる恩師、先輩、同期、後輩……。すべての人たちから刺激を受け、自身の野球人生にプラスしていった。入団当初は野球に対して「消極的」と言われていたのが嘘のように何事にも積極的になった。

 道具も大切にしている。浅井氏が現役時代に使っていたファーストミットは、1993年から1995年まで広島に在籍した左投げ右打ちのルイス・メディーナ外野手兼一塁手からもらったもの。「僕はそれまで外野しかやっていなかったから、ファーストミットをつくれなかったんで、メディーナにくれって言ってもらったんです。それをずっと使いました。僕が現役をやめる頃だったかな。メディーナが東京ドームに来たので、グラブを見せたら『お前、まだこれ使っているのか』って驚いていましたけどね。グラブはいまも家に置いてますよ」。

 思えばプロ1年目にアメリカ留学を経験したことも役立ったという。「例えば外野だったらボールを追いかけるのに、目を切るなってあるじゃないですか。アメリカは違いました。目を切っても早くできるんだったら、そっちの方が合理的じゃん、エラーしなかったら何でもいいじゃん、みたいな感じで教えてもらいましたからね。それがいいとは言わないけど、そういう考えもあるということを早い時期に知ったのは良かったと思います」。

 思い出はありすぎるほどある。いろんな人と出会い、そのおかげで、今も野球と関わることができている。浅井氏はこれまでのことを振り返るたびに「感謝」という言葉を何度も何度も口にした。育ててくれたカープに、大好きな野球に、まだまだ恩返しをし続ける。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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