無死満塁なら「前の打者は三振しろと思った」 重圧と無縁…“切り札”のプラス思考

広島の代打の切り札として活躍した浅井樹氏(中央、写真は2005年)【写真:共同通信社】
広島の代打の切り札として活躍した浅井樹氏(中央、写真は2005年)【写真:共同通信社】

浅井樹さんは代打で154安打、打率.315をマーク

 元広島外野手の浅井樹氏(カープ・ベースボールクリニックコーチ)は現役時代、左の強打者として知られるとともに、代打稼業でも結果を残した。代打での通算成績は打率.315、154安打、93打点、サヨナラ安打も4度記録した。一振りでここまでの数字をたたき出すのは決して簡単ではない。何か秘訣はあったのか。「僕は基本的に緊張しいなんですが、打席だけは全く緊張しなかったんです。ワクワク感しかなかったんです」とサラリと明かした。

「ある意味、開き直れるかどうかですよね」と言って浅井氏は自身の考え方を説明した。「まず勝負ごとは5割、マルかバツしかないと考える。では、マルって何? 自分の打席が終わった時に以前よりもプラスになっているような状況を作れば勝ちなんじゃないか。ってことはホームランを打つ必要はないな、ランナーが二塁にいたら、少なくとも三塁にすればいい。“ただ死に”だけはしない。マイナスにもしない。そういう発想です」

 さらに「例えば力む理由が10あったとする。そこから、もし3つ省けたら、7になったら楽だよねって思う。そんなふうに自分を持って行きましたね」と続けた。「だからワクワクしかなかった。プラスに持って行くためのワクワク感しかなかった。ボールカウント0-0は対等な立場。そこから1ボールになったら有利になり、2ボールになったら、もっと有利になる。すべていい方に転換していきました」

 そんな感覚にいつからなったかは「わからないですね」という。1軍で場数をこなすうちに身についたのだろうか。「極端な話、無死満塁だったら、前のバッターは三振しろって思ってましたからね。俺に1アウト満塁で回してくれってね」。チャンスに打席が回ってきたということは、相手にとってはピンチの場面。浅井氏は精神的にも優位に立って、グラウンドで戦っていたわけだ。

内田順三打撃コーチや野村謙二郎氏から学んだ“思考”

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