負けたら米国へ“強制送還” 「確信に変わった」はずが…極限状況で大珍事「嘘だろ」|球界群像 山本昌#9

元中日・山本昌氏【写真:荒川祐史】元中日・山本昌氏【写真:荒川祐史】

山本昌氏は6年目、開幕から不調…巨人・桑田との投げ合い制して涙の勝利

 西武・松坂大輔投手はオリックス・イチロー外野手との初対決(1999年5月16日、西武ドーム)で3三振を奪い、試合後のヒーローインタビューで「自信から確信に変わった」と発言した。50歳まで現役を続けてNPB通算219勝を挙げた元中日投手の山本昌氏もそれと同じような気持ちになったことがある。プロ6年目、1989年5月27日の巨人戦(ナゴヤ球場)での完封勝利。「松坂君じゃないけど、去年はまぐれじゃなかったという確信に変わった」という。

 プロ5年目の1988年、ドジャース留学で成長して、シーズン途中に帰国して8月の終わりに復帰。そこから5勝0敗、防御率0.55の成績を残して中日優勝に貢献し、西武との日本シリーズにも先発した。だが、翌1989年シーズンはリリーフからスタート。4月16日の阪神戦(甲子園)でプロ初セーブをマークしたが、それ以外は中継ぎ。登板6試合目の4月23日の広島戦(広島)が、その年の初先発だった。

「オープン戦でちょっと打たれたんです。それで星野さんが『お前、調子に乗るな、その気になるな』ということで、最初から先発に入れなかったと思う。その辺も僕の性格を見抜いてのことでしょう。立浪(和義・現中日監督)のように芯が強く見えなかっただろうからね」。しかし、白星はなかなかつかめなかった。その後は先発もリリーフも両方こなしたが、13試合に登板した時点で0勝4敗1セーブ。やっぱり去年はまぐれだったのか。「非常につらい思いをしましたね」。

 そんな苦境から脱出したのが5月27日の巨人戦だった。「あの時、ジャイアンツは7連勝で名古屋に乗り込んできた。もう独走だったんですよ」。そんな強い巨人の先発は、そこまでに5勝をマークしていた桑田真澄。山本氏はその試合に7安打完封、1-0で勝利した。「やったぁ! ああ、よかった」。ゲームセットの瞬間、ナゴヤ球場のマウンドで涙した。「試合が終わって泣いたのはあれが初めてというか最後でした」。またひとつ壁を乗り越えた。

9勝目から見放された“勝ち運”…2桁ならず2年連続で米国へ

 そこから山本氏は巻き返して、球宴前まで7勝5敗1セーブ。白星を先行させるまでになった。その年の球宴でセ・リーグを率いたのは前年優勝の中日・星野仙一監督。「『マサ、お前、オールスター、行きたいか』と言われて『当然、行きたいです』って答えていたんですが、発表されたメンバーに名前がなかった。何だよって思っていたら、ヤクルトの尾花さんが投げられなくて辞退して、僕が代わりに出場することになったんです。おそらく星野さんはそういうことも知っていたんでしょうね」

 星野監督にうまく“操縦”された感じだが、その年はさらに、もうひとつ、試練を与えられた。8月26日の巨人戦(東京ドーム)で9勝目をマークしてから、勝ち運に見放された。2桁勝利目前で足踏みが続いた。「足踏みといっても、0-1の試合とかもあったんですよ。それが“10勝の壁”とか書かれ始めて……」。

 4度目の挑戦となった9月23日の阪神戦(甲子園)。「これで負けたらアメリカに行けって話になった。投手コーチもバッテリーコーチもそれを知っているので『マサ、今日は飛ばしていけよ、頑張れ。(リリーフの)鹿島も(郭)源治も(中5日と)登板間隔が空いているから』と言われて。5回までに10三振を取ったんですよ。でも……」。5-2で8回もマウンドに上がったが「外野の落球もあってピンチを作ったんです」。ここで投手コーチがマウンドに来た。

 交代と思ったら「『マサ、お前、監督が代えんって言っているぞ』と言われたんで、ええーって思いましたよ」。それでも気持ちを切り替えて投げたが「外野がまた落球して……嘘だろと思った」。その回、4点を失って逆転されて敗戦投手となり、アメリカ行きが決まった。しかも往復のチケット代は自腹だった……。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

球界群像〜山本昌編〜

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