佐々木朗希よりも欲しかった“ドラ1” ビデオ見て即決…新人王導いた新米監督の慧眼|球界群像 佐々岡真司#13

広島・森下暢仁【写真:荒川祐史】広島・森下暢仁【写真:荒川祐史】

監督就任直後のドラフト…佐々木朗希らがいる中で森下暢仁を指名

 元広島投手で野球評論家の佐々岡真司氏は2020年から昨年までの3年間、広島を指揮した。5位、4位、5位と厳しい結果に終わったが、全身全霊を込めて取り組んだ。「もっとこうすれば良かった、ああすれば良かったと、言えばキリがないけどね」。どの選手にも思い入れはあるし、どの選手もこれからさらに飛躍してほしいと願うばかりだ。そんな中、自身が受賞できなかった新人王に輝いた森下暢仁投手と栗林良吏投手について、あえて語ってもらった。ともに佐々岡氏が熱望してドラフト指名した投手だ。

 3年間の監督生活の中で新人王投手が2人誕生したのは特筆すべきことだろう。先発の森下と抑えの栗林。「それは彼らがしっかり、仕事をしてくれたこそですから」と佐々岡氏は話したが、2人を育てた功績は大きい。現役時代に先発、抑えにフル回転した経験は誰にでもあるわけではない。佐々岡監督だったからこその面も必ずあるはずだ。そもそも2人とも、監督自身が欲しがって指名した投手だ。

 2019年10月17日のドラフト会議で、広島は森下を1位指名した。その10日前の10月7日に監督就任が発表され、「ドラフト前までに投手も野手も含めて、100人くらいリストアップした選手のビデオを見た」という。そこで森下を見た瞬間に決めた。「森下でいってください、森下が欲しいです」と球団に要望した。この年は佐々木朗希(大船渡→ロッテ)、奥川恭伸(星稜→ヤクルト)、宮城大弥(興南→オリックス)らがいた中での選択だった。

「マウンド度胸とかもそうだけど、やっぱり真っ直ぐを見た時にね。とにかく即戦力が欲しかった。佐々木や奥川らもすごいピッチャーだったけど、2年はかかるだろうと思った。それ以上に森下は完成されていたんでね」。球団も佐々岡監督の意向を尊重。単独入札での1位指名に成功した。その期待に応えるように森下も1年目から10勝3敗、防御率1.91の好成績を残した。見る目に間違いはなかった。

守護神・栗林良吏は「将来的に先発も」

 2020年ドラフト会議で1位指名した栗林もそうだ。この時は早川隆久投手(早大→楽天)と意見が分かれていたという。「当然、早川ということも考えたけど、この時は課題が抑えだったんでね。栗林の大学時代、社会人時代のピッチングを見て、空振りのとれる真っ直ぐ、フォークは抑えでもいけるんじゃないかと思った。ジャパンでも抑えをやっていたというのもあったんでね」。森下同様、単独入札での1位指名だった。

「ただ、栗林の場合は先発もいけるというのもあって、キャンプで投球を見て、僕も打席に入って、ちょっと球筋を見たりした。抑えで行こうと、ある程度決めてはいたんですけどね。本人にはオープン戦の最後の時に言いました」。結果、開幕から22試合連続無失点を記録するなど、0勝1敗37セーブ、防御率0.86。いきなり日本を代表する抑え投手になったのだから、こちらの見立ても大正解だったわけだ。

 もっとも、栗林は先発も抑えもこなせるタイプであることに変わりなく、「僕に似ているところがある」と佐々岡氏。自身の現役時代とダブる部分があるという。「今年はもちろん抑えでしょうけど、将来的には先発もあるんじゃないですかね。栗林にはいずれは100勝100セーブを目指せって冗談で言いましたけどね」と笑みを浮かべながら話したが、楽しみのひとつではあるようだ。

 コロナ禍も加わり「精神的にはそりゃあきつかったですよ。負ければ発散するものもなかったし、ストレスもたまった」と振り返った監督生活。2022年10月2日の中日戦(マツダ)終了後、佐々岡監督はファンに辞任を報告した。当然、無念の思いがそこにはあった。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

球界群像〜佐々岡真司編〜

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