「選手の見せ方を常に意識」カープ女子の火付け役…伝え続けた天才打者の“裏の顔”

現在は広島の編成部編成課長を務める比嘉寿光氏【写真:山口真司】
現在は広島の編成部編成課長を務める比嘉寿光氏【写真:山口真司】

カープ女子の火付け役…広島元広報の比嘉寿光氏

 選手の“裏の顔”も……。早稲田大学からドラフト3位で広島に入団、2009年の現役引退後、広島の球団広報に転身した比嘉寿光氏(現広島編成部編成課長)は、カープ女子の火付け役として“比嘉ブログ”でも活躍した。「ファンの目線では追っかけられないところに入って、そこでしか撮れないような写真などを発信しました」。全力で挑んだ。天才打者と言われた前田智徳外野手の知られざる素顔にも「お前、それ、盗撮だろ」と言われながらも果敢にアタックしていた。

 そもそも「比嘉ブログ」は、松田元オーナーの提案で始まったという。「まだその頃は周りでやっている人が少なかった。それをやらせてもらったのは大きかったですね」と比嘉氏が振り返るように話題となり、大好評だった。比嘉氏退任後も広報ブログは受け継がれ、現在は元広島内野手の松本高明広報が担当。ブログ「たかあきブログ」(2022年1月28日で終了)を経てインスタグラム「たかあきグラム」へと“進化”している。

「今は動画も撮れますし、すぐアップできるようになっていますよね。僕の時は配信するだけでも大変な時があった。その作業が終わらないと寝れなかったので、電波の悪いところとか、勘弁してくれよって思うくらいでしたよねぇ」と比嘉氏は懐かしそうに話した。そして「毎日のことだから、ネタ探しも大変でしたよ」と言って、続けて口にしたのが、当時現役選手だった前田智徳氏のことだ。

「前田さんは甘いものが好きで、裏で、そういう差し入れがあると、必ずケーキとかドーナツに手を出すんですけど、それを食べているところを写真に撮っていました。当時は今みたいにいい写真が撮れなかったし、こっそり撮るからあまり写真もきれいじゃなかったんですけど、実はこれ、前田さんです、みたいな小っちゃい写真を出して“甘い物大好き、前田さん”のようなタイトルをつけてやっていました」

孤高の天才打者に「裏の顔」が…

 そんな“撮影”の際、前田氏にいつもからかわれるように言われたのが「お前、それ、盗撮だろ」だった。「『いいじゃないですか、ファンの人はすごく喜ぶんですよ』って笑いながら返して、撮らせてもらっていました。撮ったらすぐ使うわけではなく、使えるタイミングで発信していました。『絶対使うなよ』って釘を刺されたこともありましたけどね」。

 グラウンド上での野球人としての姿しか知らないファンにとっては貴重な“情報”になった。「前田さんの“裏の顔”みたいなのって、普通の人はわからないでしょうからね」。そんなニーズがあったからこそ、比嘉氏もアタックした。前田氏に限らず、いろんな選手に協力してもらって、今なおファンを楽しませる“アイテム”に成長していったわけだ。

「野球選手をやめて何ができるかと考えた時、僕は選手たちの良さを伝えたいと思った。良さというのは、性格もそうですし、ユニホームを着ていないところでも、こんないい面があるんだよってこと。僕は選手として、それを知っていたんでね。そういう意味では選手の見せ方というのを常に意識していました。自分で発信するのはあまり得意ではなかったんですけど、伝え方とか、いろいろ勉強しだしたのも、そこからでしたね」。カープ女子の火付け役と言われる比嘉氏だが、ブログ効果もまた絶大だったのは間違いない。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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