快投中の“強制降板”にブチ切れ「何で」 後輩の“踏み台”に…屈辱だった同情の賞金

中日で活躍した鈴木孝政氏【写真:山口真司】
中日で活躍した鈴木孝政氏【写真:山口真司】

鈴木孝政氏は1987年、4回無失点で降板して10勝目を逃した

 交代指令に大憤慨した。元中日投手の鈴木孝政氏(中日OB会長)は現役時代にそんな経験がある。決定権は指揮官にあるとわかっていながらも、その時ばかりは納得できなかったという。プロ15年目の1987年10月6日の阪神戦(甲子園)。監督は星野仙一氏だった。鈴木氏は先発して4回2安打無失点と好投し、2-0でリードしている展開でいきなり降板させられた。勝利投手になれば10勝到達の試合だった。

 その日、鈴木氏は調子が良かったという。「よし、今日はいけると思ったもんね」。味方打線は4回に1点先制、5回にも1点を追加した。10勝チャンス到来だったが、その裏のマウンドに鈴木氏の姿はなかった。

「4回が終わったら、(投手コーチの)池田(英俊)さんが『代わるぞ』って。こっちはびっくりだよ。ええーっだよ。ちょっと待ってください、何でですかって言ったよ」。池田コーチは困った顔をして「監督に聞いてくれ」と言って、その場を去った。

 鈴木氏はシーズン前に星野監督から「10勝したら、賞金を出す」とハッパをかけられていた。「ホントですか」。そう言って、ひとつの励みにしてペナントレースに臨んでいた。その目標まで、あと1勝。目前になったところでの降板指令だったから、当然、気分が悪かった。もっとも、鈴木氏の怒りは星野監督もわかっていた。すぐに池田コーチが戻って来て「監督も球団も10勝を認めるから」と言われたそうだ。

小松辰雄氏に最多勝を取らせるための戦略だった

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