V3目指す広島に切り札となる「家電」 ヘッドトレーナーも評価、その効果とは

昨季から導入されている「コアトレチェア」、その効果とは

 新シーズンの到来が迫るプロ野球。各球団が着々と準備を進める中、大きな注目を浴びるチームの一つがセ・リーグを連覇中の広島東洋カープだ。赤ヘル軍団は2016年に続き、2017年も圧倒的な強さを披露。88勝51敗4分けで、2位の阪神タイガースに10ゲーム差をつける独走Vを果たした。クライマックスシリーズで横浜DeNAベイスターズに競り負けて日本シリーズ出場は逃したが、ペナントレースの強さは際立っていた。

 今季は本拠地で迎える3月30日の中日ドラゴンズ戦で開幕。リーグ3連覇、そして悲願の日本一を目指し、今年も宮崎・日南の春季キャンプからチームを仕上げていく。そんな常勝軍団になりつつある広島が2年連続で導入している「家電」がある。体幹などを鍛えることができる「コアトレチェア」だ。

「昨年の春からカープではコアトレチェアを導入しています。ウォーミングアップ前に選手は使っていました。トレーニングの効果はありましたね。体幹というものをどのように使ったらいいのかをもう一度再認識することができたと思います。選手はインナーマッスルの使い方がわかるようになったと言っていました。僕らが一番大事にしているのはわき腹の部分です。ここに力が入るようにしたい。コアトレチェアでトレーニングをする。自分で動きながら、筋肉の使い方がわかってくるというのがいいですね」

 こう語るのは広島の石井雅也トレーナー部長だ。

 日本プロ野球トレーナー協会会長も務めている石井氏はトップトレーナーの一人となった現在も見識を広めるために積極的に活動しており、その範囲は国境や競技の垣根を越える。最新のトレーニングやトレーナー組織のストラクチャー作りのために、近年はサッカーのドイツ・ブンデスリーガの1FCケルンやMLBテキサス・レンジャーズも視察。そんな石井氏がトレーニング効果を実感する「コアトレチェア」は、パナソニック社が開発し、昨年2月25日に発売された製品だ。アスリートから一般層まで幅広い支持を集め、広島では本拠地マツダスタジアムのトレーニングルームにも3台設置。コアトレチェアを活用したトレーニングは昨年の春季キャンプで本格導入され、昨年11月の日南・秋季キャンプでも若手選手を中心に活用されている。

 腹筋、背筋などの胴体部分や骨盤周辺の「体幹」と呼ばれる部分、インナーマッスルを強化することが導入の主な目的で、選手はウォーミングアップの前に各々がコアトレチェアにまたがり、体幹部分に刺激を入れて強化する。広島は各選手ともフィジカル強化への意識が高いが、とりわけ活用しているのは「扇の要」を務める29歳の中堅選手だという。

「一番使っていたのはキャッチャーの會澤(翼)ですね。『これ、いいですね!』と話していましたね」

 石井トレーナーによると、昨季セ・リーグのベストナインに初選出された會澤捕手はコンディション維持とパフォーマンスアップの一環としてコアトレチェアを活用していたという。

コアトレチェアは何が優れているのか―

 また、同じくベストナインに選出された鈴木誠也外野手も愛用。「体幹を意識するための入り口として、コアトレチェアは絶対的に素晴らしい。彼(鈴木)はある程度、わき腹などの筋肉を使うコツがわかってきたら、次のステップに進んでいました」と石井氏は振り返る。5年連続でゴールデングラブ賞を獲得している名手・菊池涼介内野手に至っては、自宅にコアトレチェアを導入しているという。

 選手のみならず、スタッフもシーズンを通じて活用しているようで、長年腰痛に苦しんできた緒方孝市監督もその一人。「スタッフでは緒方監督が一番使う頻度が高かったですね。ヘルニアに苦しんでいるので、これはいいね、とよく活用していました」と石井氏は証言する。監督自身も「現役時代にコアトレチェアがあったら? 使っていたと思いますよ」と話している。

 では「コアトレチェア」はどこが優れているのか。

「野球においてはピッチングとバッティングで回旋運動が重要です。体の左右のバランスと、下半身から骨盤、上半身までのアライメントを整えることがパフォーマンスを出すためのキーになります。コアトレチェアのトレーニングではそれが自然と整えられます。それがすごい」

 石井氏はその効果をこう説明する。アライメントとは英語で「一列に並ぶこと」。コアトレチェアによるトレーニングは、左右差など身体の歪みを解消し、バランスの取れた、一直線の状態を作り出すことをサポートする。そして、ふくらはぎ、太もも、骨盤、体幹部分、上半身が地面から垂直方向に一直線に揃うという理想的な状態が、身体をひねる、回すという動作を伴うバッティング、ピッチングにおいて最高のパフォーマンスを生み出すという。

 コアトレチェアのトレーニングでは「座る」「またぐ」という2種類の座り方でバランスを取るだけで、効果的に体幹部分を的確に鍛えることができる。メニューは美しい姿勢を作る「全身コアトレコース」、腹部の引き締め、くびれを作る「おなか・ウエストコース」、下腹部や骨盤周りに刺激を入れる「下腹・骨盤底筋コース」の3つを備え、それぞれ強・弱の選択が可能。音声ガイダンスによる自動のトレーニングも行うことができる。

 また、コアトレチェアを活用したトレーニングメニューは、トップアスリートと専属契約を結ぶプロトレーナーの木場克己氏が監修。パナソニックが独自開発したV字運動で身体を揺らして筋肉に負荷をかける一方、シートの自動変形により座り方を変化させることで、鍛える筋肉や負荷を調整することも可能だ。

 そんなコアトレチェアで強化できる部位は胸、背中、腰、もも、お尻などのアウターマッスル(表層筋)と、インナーマッスル。インナーマッスルの衰えは肥満や姿勢の悪化、腰痛や肩こりなどの要因となるため、アスリートだけでなく、一般の人々の生活にとっても大きな効果が期待できると、石井氏は分析する。

自宅にいながら体の引き締めも可能に?

「体幹部分や筋肉や身体のバランスを意識するという入り口としては絶対的に素晴らしい。一般の方々にも抜群の家電だと思います。体幹トレーニングをしたいと思っても、マンツーマンで指導してもらうという機会は簡単に作れないじゃないですか。実はうちの妻もやっているんですが、とにかくコアトレチェアに乗っていればいい(笑)。

 顔を動かさないようにと、我が家ではストレッチポールを持ちながら乗っているんですけれど、テレビを見ながらでも効果は出ているみたいです。元々、妻は腰痛持ちだったんですけど感覚的に全然違うと言っています。よく続いてますね。腰痛改善には大きく役立ちましたね。インナーマッスルに働きかけながら、基本姿勢を正してくれるんです」

 コアトレチェアではトレーニングジムなどでマンツーマンで指導するトレーナーの代わりに、内蔵されたエアバッグがしっかりと骨盤を支えてくれる。そして、自動音声に従うことで、老若男女問わず、自宅にいながら個人トレーナーとの1対1の指導のような感覚でインナーマッスルを強化することができる利点がある。

 実際にコアトレチェアによる健康促進の効果もデータで実証されている。40歳から50歳の男女7人がコアトレチェアによるトレーニングを1日ごとに15分を2回、3週間続けるというモニタリングを行った。その結果、最高でウエストがマイナス11.4センチ、下腹部がマイナス9.1センチ、ヒップがマイナス5.3センチ、体重がマイナス3.1キロと、様々な引き締め効果も確認されている(注・パナソニック社調べ。効果には個人差あり)。

 トップアスリートのパフォーマンス向上から、一般の人たちの健康促進、美しい姿勢作りまで、様々な効果が期待できるコアトレチェア。発売から1年足らずでそその活躍の場を広げている。

(Full-Count編集部)

KEYWORD

CATEGORY