【小島啓民の目】大学ジャパン7連続K 創価大・田中正義に見る「真っ向勝負」の大切さ

「逃げない」ために必要なことと、バルセロナ五輪代表監督の言葉

 ストレートが打たれたら変化球でかわすことは、試合の中では必要な技術ではありますが、まずは前の打席で打たれたら、次は同じ球で打ち取るくらいの気概がないと孤独なマウンドにおいては、務まらないでしょう。強気が災いして、一度や二度は結果が悪くなることもあるかと思いますが、成長過程の選手には、まずは「逃げない」という強い気持ちが自身の成長を高めるためには必要です。

 私は打者でしたが、結果が怖くてバットを振ることが出来なくなる瞬間を何度も経験してきました。その度に、自己嫌悪に陥っていたことを思い出します。そういった経験を何度も積む中で、最後に立ち返るのは、「失敗したらまた練習すれば良い。まずは、自分のやるべきことに集中しよう」と心でつぶやくという対処でした。

「ど真ん中のストライクを平然と見送って何をしているの?」など端から見ている方が非難しますが、選手の心理は、1球ごとに動いていると言っても過言ではないくらい揺れています。これはプロ選手にも言えることでしょう。「開き直りが大切」とよく言われますが、単なる「やけくそ」になることではありません。「自分のパフォーマンスを信じる」という気持ちを指していると考えます。

 随分、昔の話となりますが、現役時代のバルセロナオリンピックチームの山中監督からよく「挑戦する勇気を持て」と言われていたことを改めて思い出しました。挑戦するにしても、その前に勇気が必要なんですよね。

「結果は、後からついてくる」

 当たり前のことですが、本当にそういうことです。この試合に関わった両チームの選手全員に、「挑戦する気持ちと失敗を怖れずに」とエールを送るとともに、歴史的な試合を演出してくれた関係者の方々に敬意を表したいと思います。

【了】

小島啓民●文 text by Hirotami Kojima

小島啓民 プロフィール

kojima
1964年3月3日生まれ。長崎県出身。長崎県立諫早高で三塁手として甲子園に出場。早大に進学し、社会人野球の名門・三菱重工長崎でプレー。1991年、都市対抗野球では4番打者として準優勝に貢献し、久慈賞受賞、社会人野球ベストナインに。1992年バルセロナ五輪に出場し、銅メダルを獲得。1995年~2000年まで三菱重工長崎で監督。1999年の都市対抗野球では準優勝。日本代表チームのコーチも歴任。2000年から1年間、JOC在外研修員としてサンディエゴパドレス1Aコーチとして、コーチングを学ぶ。2010年広州アジア大会では監督で銅メダル、2013年東アジア大会では金メダル。侍ジャパンの台湾遠征時もバルセロナ五輪でチームメートだった小久保監督をヘッドコーチとして支えた。2014年韓国で開催されたアジア大会でも2大会連続で銅メダル。プロ・アマ混成の第1回21Uワールドカップでも侍ジャパンのヘッドコーチで準優勝。公式ブログ「BASEBALL PLUS(http://baseballplus.blogspot.jp/)」も野球関係者の間では人気となっている。

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