柳田悠岐の鋭いゴロをアウトに ロッテが採用した「柳田シフト」に迫る
ロッテが柳田の打席で見せた守備シフト
4月7日、ヤフオクドームで行われたソフトバンク-ロッテ、1回裏柳田悠岐の第1打席。昨季のMVPはロッテのエース涌井秀章が投じた初球のカーブをフルスイングでとらえた。打球は強烈なゴロとなり、二塁ベース脇を通過。センターへ抜けようとしたところ、二塁後方で待ち構えていた遊撃手・鈴木大地が華麗に捕球。一塁に送りアウトにしてみせた。実況が「完璧な当たり」と表現するほどのスピードの打球をだ。
テレビ中継を見ていた人は違和感を覚えたはずだ。3回の柳田の第2打席では、まるで二塁走者がいるかのように、センターカメラは遊撃・鈴木の後頭部を映し続けた。中継も異変に気づき、内野全体のポジションを映すカメラに切り替えた。ロッテが「柳田シフト」をとっているのは明らかだった。
近年MLBでは極端な守備シフトが大流行している。左打者に対し、遊撃手を従来の二塁手の定位置に守らせたり、二・三塁手を右翼手の前に配置しているのを見たことがある人もいるはずだ。
3月に出版された『ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法』(KADOKAWA刊/トラヴィス・ソーチック著/桑田健訳)では、MLBの弱小球団、ピッツバーグ・パイレーツが強者に対抗する戦術の1つとして、大胆な守備シフトを導入し、躍進を遂げた様子が描かれている。
守備シフトの信頼できそうな記録に基づく起源は、1946年までさかのぼる。MLB最後の4割打者、テッド・ウィリアムズの圧倒的な打棒に対応するため、クリーブランド・インディアンスの監督、ルー・ブードローは野手を極端にライト側に寄せる作戦をとった。この作戦は、のちに「テッド・ウィリアムズ・シフト」や「ルー・ブードロー・シフト」と呼ばれることとなった。日本でも王貞治に対して野手を一塁側に寄せた「王シフト」が有名だ。