楽天・田中将大は米国でも通用するのか?

心配される2つの要素

 さらに、もう1つの心配がボール。滑るとされるメジャー公式球への対応だ。この不安は今年の第3回WBCでも露呈し、絶対的エースとして大会に臨んだ田中は力を発揮できなかった。

 そもそも、2009年の第2回大会の時から「最後まで苦労した。気候によっても違う。日本で触っているのと、向こう(米国)で乾燥した中で触るのとでも全然違う」と苦しみ続けた。制球力という点では、現在の田中はダルビッシュを上回るだけに、ここに狂いが生じれば、命取りとなりかねない。直球の制球が定まらなかったダルビッシュと同様、少なくとも1年目は最大の課題となりそうだ。

 メジャー挑戦となれば、ポスティングシステム(入札制度)を利用することになる。楽天としても、今年が田中を最も高く売るチャンスで、最終的には本人の意思を尊重する意向を示している。本人も昨オフの契約更改の席で「そういった希望を持っていることは(球団に)伝えさせてもらった」と話しており、障害はない。

 唯一の問題は、ポスティング・システムが実は昨年、失効していたということ。8月中旬に日本の一部報道で明らかになったが、「日米間選手契約に関する協定」が一時的に破棄されていたという。同システムの欠点などを改善するためのものだが、A・ロドリゲスらが絡んだ薬物スキャンダルへの対応で忙殺されているメジャーリーグ機構(MLB)と、日本野球機構(NPB)の間での新制度策定交渉が進んでいない。

 ただ、現在の状態は両者にとって得がないため、米メディアの間では、オフまでの新制度策定を楽観視する声が多い。入札球団の公開や、交渉が成立しなかった場合は入札額が2番目以降の球団に交渉権が移るなどの条件変更も検討課題となっており、結果的に田中に有利となる可能性も残されているようだ。

 今オフの争奪戦は必至。特に力を入れているとされるのが、ダルビッシュ獲得に本格参戦しなかったことが批判されたヤンキースで、チーム再建の切り札に指名するとも言われる。イチロー、黒田との「日本人トリオ」となれば、魅力は十分だ。レンジャーズでダルビッシュと「2枚看板」を形成する可能性も残されている。

 今季、田中の登板に足繁く通うメジャー球団のスカウトは「どこのチームに行ってもローテーションに入れる逸材」と太鼓判を押す。現在のリアルな評価は「通用する」が圧倒的。あとは、本人のメジャー挑戦表明を待つばかりとなっている。

【了】

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