バレンティンはなぜこれだけ本塁打を量産できるのか
研究熱心な姿勢に加わった自信
【その2】ステップの変化
今年のバレンティンは、追い込まれる前と後で打撃フォームが違う。2ストライクまでは左足を上げて、思い切りスイングしているが、追い込まれるとすり足で対応し、体のブレを最小限に抑えている。場合によってはカウントだけでなく、投手によってもステップを変えることもある。各球団の捕手がバレンティンを「打ち取れなくなった」と証言するほどだ。
そのため、三振狙いのストライクからボールになる変化球に対しても空振りすることなく、ファウルに逃げたり、見極められるようになった。これにより、ボール球を振らされて空振りを取られるという弱点が消え、球を捉える回数も増えた。
【その3】研究熱心な姿勢に加わった自信
元々、バレンティンは研究熱心で、配球も勉強し、球種を絞っている。そこに自信が加わったことで、少しのボール球でも狙った球種であれば、体勢を崩されずにパワーでスタンドに運ぶことができるようになった。
9月10日の広島のエース、前田健太から打った54本目のホームランも明らかなボール球。「本当は打ってはいけない球」と本人も反省したが、一方でそれを打てるだけの確証が芽生えてきたのだ。
このことからも分かるように、バレンティンはあらゆる面で大きな進化を遂げている。たとえば、2011年に486打数で131個もあった三振は、今年470打数で86個まで減少。四球も89個でリーグトップを誇る(今年の数字はすべて55号を放った9月11日現在)。
それらの成果はすべて、日本の野球と真摯に向き合い、積み重ねてきた努力の賜物。米国で苦しみ、日本に渡った29歳はその才能をついに開花させた。そのひた向きな姿勢がある限り、49年ぶりに歴史を動かしたスラッガーはまだまだ進化し続けるに違いない。
【了】