マートンと相川の乱闘に見る正捕手のあるべき姿
相川がマートンのタックルに激高した理由
相川は4月に横浜DeNAのブランコからタックルを受け、左肩鎖関節亜脱臼で全治2カ月の重傷を負った。さらに5月には控え捕手だった田中雅彦が同じマートンに鎖骨骨折を負わされている。今季のヤクルトはそのようなケガの連鎖によって低迷が続いたのだ。相川からすれば、マートンの“殺人タックル”に対する猛抗議は今後の再発防止の意味を込めたものだったのかもしれない。
だが一方では、そのような外国人のタックルに対してクレバーに対応していた者もいる。たとえば、元ヤクルトの古田敦也氏のような名捕手と呼ばれる選手たちだ。球団関係者はこう説明する。
「古田をはじめ成績を残した名捕手は現役の時、外国人が突っ込んでくるとわかったら、本塁ベースを空けて待っていた。自分を目がけてきても、うまくよけていたね。時には体すら張らずに、生還を許すこともあった。それはなぜかというと、タックルを浴びて、大けがを負う方がチームにとって痛手だから」
つまり歴史に名を刻んだ捕手たちは、相手に1点を与えることよりも、むしろ長期の戦線離脱の方がチームにとってダメージが大きいことを理解した上で対応していたのである。チャンスをものにしなければならない若手選手には難しいことかもしれないが、中堅やベテラン選手にとっては考えさせられる話に違いない。
体を張るだけでは一流と呼ばれる域にまでたどり着けない。あらゆるリスクを考えてこそ、名捕手として名を残せるのである。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count