限られた戦力で最激戦区のア・リーグ東地区を席巻するレイズ 名将・マドンの手腕とは?
今年も「らしさ」を見せるレイズ
ダークホースが華々しい戦いぶりを見せている。2年ぶりのプレーオフ進出は目前。レイズが今年も「らしさ」を存分に発揮している。ヤンキースやレッドソックスといった名門球団に戦力では圧倒的に劣る彼らが、なぜ勝てるのか。
今季の総年俸は6410万ドル(約63億4590円)。これは1位ヤンキース(2億3620万ドル=約233億8380円)の4分の1程度だ。だが、今年だけでなく、毎年のようにア・リーグ東地区で優勝争いやプレーオフ進出争いに絡み、時には“番狂わせ”を起こす。いや、もはや“番狂わせ”という表現は失礼か。メジャー最激戦と言われる同地区では、これが日常となっている。
デビッド・プライスやエバン・ロンゴリアといった、かつての超有望株が順調に成長して投打の軸となり、大型契約を結んだ。そこに昨季抑えとして大ブレークしたフェルナンド・ロドニーや、今季高打率を残しているジェームズ・ロニーといった安価で獲得できるベテランを加えたチーム戦略は見事だが、戦力だけを見れば、やはり苦しい。でも、勝てるのだ。
最大のストロングポイントは、2006年に就任したジョー・マドン監督の存在だろう。大胆な守備シフトや緻密な戦略でチームを勝利に導き、すでに2008年、2011年と2度のア・リーグ最優秀監督に選出されている名将だ。その手腕は、あのイチローがレイズ対策を聞かれて「ないです。どうすれば勝つ可能性が高いか。そのためのものを基本的に備えている」と脱帽したほど。ライバルたちにとって、こんなに勝つことが難しいチームはない。
名将の人柄が選手やメディアを引き付けることも大きい。昨季、チームには松井秀喜という超大物が加入し、日本報道陣が大挙して押し寄せた。これを煙たがる指揮官もメジャーには少なくないが、マドンの取材対応は丁寧で誠実だった。そして、実績のあるベテランに対する敬意を忘れることもなかった。
結果が出ず、もがき苦しむ松井をチームは早々に切ろうとしたが、それに最後まで抵抗したのが、ほかでもない指揮官。それでも状況が好転せず、戦力外を通告せざるをなくなった昨年7月25日、日本報道陣に囲まれたマドンは、やはり誠実に取材対応し、松井に対する思いを吐露している。コメントは少し長いが、その内容にはマドンの人柄がよく表れている。