【イチロー4000本安打の価値】イチローの言霊(前編)
日米通算4000安打を達成した夜、イチローは上機嫌だった。日本の報道陣のために、約45分間もの記者会見を行ったのだ。次々と紡ぎ出される言葉の中には、野球にとどまらず、人生そのものにおいてもヒントとなるような“メッセージ”が含まれていた。その言葉から見える、天才打者の哲学とは? そして、我々が学ぶべきものとは?
4000のヒットを打つには、僕の数字で言うと8000回以上は悔しい思いをしている
――4000安打を達成した気持ちは?
「こういう切りのいい数字というのは1000回に1回しか来ないので、それを4回重ねられたことはとても…、とてもじゃないですね。それなりかなと思いますけど、4000という数字よりも、あんなふうにチームメートやファンの人たちが祝福してくれるとは全く想像していなかったので、そのことですね。それがとても深く刻まれましたし、結局、4000という数字が特別なものを作るのではなくて、記録が特別な瞬間を作るのではなくて、自分以外の人たちが特別な瞬間を作ってくれるものだというふうに強く思いました」
――チームメートがダッグアウトから出てきて、祝福してくれた。
「ちょっとやめてほしいと思いましたね。嬉し過ぎて、僕のためにゲームを止めて時間を僕だけのために作ってくれるという行為は、とても想像出来るわけがないですよね、ヤンキースタジアムで。ただただ感激しました」
――4000本安打というピート・ローズ、タイ・カップしかいない領域に到達した。
「これ、ややこしい数字なので。両方のリーグの数字を足しているものですから難しいんですけれども、ヒットを打ってきた数というよりも、2000とか3000とかあったんですけれど、こういうときにも思うのは、いい結果を出たことを誇れる自分ではないんですよね。誇れることがあるとすると、4000のヒットを打つには、僕の数字で言うと8000回以上は悔しい思いをしているんですよね。それと常に向き合ってきたことの事実はあるので、誇れるとしたらそこじゃないかなというふうに思いますね」