横浜DeNAを戦力外 それでもラミレスがお買い得な理由
1年で活躍して、すぐにアメリカへ戻るつもりだった
ラミレスはメジャーリーグのインディアンスから日本にやってきた。その当時を振り返り、「1年で活躍して日本マネーをもらって、すぐにアメリカに戻るつもりでいた」と話す。特別、仲間意識を強く持ってプレーすることもなかった。しかし、メジャーリーガーのプライドは完全に砕かれた。配球などの面で米国とは異なる日本野球に戸惑い、文化にも馴染めなかった。1年目の結果自体は2割8分、29本塁打、88打点と好成績だったが、本人は「もっと打てたんじゃないか」と納得しなかった。
以降、日本の野球を舐めるような姿勢を改め、日本という国や文化を愛するように努めた。食事も生活習慣も、見るテレビさえも、日本式へと変えていった。言葉も懸命に覚えた。配球も味方に頭を下げて聞き回った。心から日本に慣れ親しむことが、活躍への一番の近道になると考えたのである。
ある球団編成部の関係者が日本で成功する外国人の条件について「日本が好きで、日本の野球を学ぶ姿勢があること」と話すように、外国人選手の中には、日本の野球や文化に溶け込めず、成績を残せないケースも多い。その重要な要素を、ラミレスは早くから肌で感じ取っていたのだ。
年月が経過するに連れ、今度はラミレスが異国の地で不安に苛まれる選手たちの面倒を見るようになり、いつしか彼らの心の拠り所となった。ラミレス以降に来日したヤクルトのリグス、ガイエル、グライシンガー、ゴンザレスといった外国人選手はラミレスのバックアップによって活躍できたと言っても過言ではない。
同じベネズエラ出身である巨人のロペスも、来日前に日本で戦う上でのアドバイスを大先輩から授けられ、それが今季の活躍につながったという。今季の横浜DeNAのモーガン、ブランコの活躍もラミレスと決して無縁ではない。
根強い人気も長所の一つだ。ホームランを打った際のパフォーマンスに志村けんの「アイーン」、ダンディ坂野の「ゲッツ!」、大木こだまの「チッチキチー」、藤崎マーケットの「ラララライ体操」など数々のギャグを取り入れ、日本人の心を鷲掴みにしてきた。豊富な話題性と明るい性格を持つ助っ人はファンを愛し、愛される。その人気ぶりに、これまでも複数の球団が獲得調査に乗り出したほどだ。
これまでは在京球団でプレーしてきたが、関東を離れる決意もできている。年々パフォーマンスは落ちているが、打撃面ではチームに貢献できる力を維持し、本人も「まだ3割、30本は打てるチャンスはある」と強い意識を持つ。将来、日本で指導者を目指すほどの親日家となったラミレスは、短所を打ち消すほどの長所を兼ねそろえるのだ。
今でもロッテやオリックスなどが興味を持つとされる39歳は果たして来季、日本でプレーの場をつかむことができるのか。少なくともDH制が導入されているパのチームならば、デメリットはないはずだ。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count