トミー・ジョン手術から復帰を目指す男たち 多くの投手が受ける手術の実際
手術後、急速がアップすることも
野球のニュースを見ていると、「トミー・ジョン手術」という言葉をよく耳にする。初めて聞く人はそれがどんなものか想像もつかないに違いない。日本語にすると、側副靱帯再建手術。破損した腱に代わり、体の別の個所の腱を移植する手術で、米国の名医・ジョーブ博士によって1974年にこの手術を施された選手の名前から、その呼び名がついた。これまで実績のある投手たちが受けてきた手術でもある。
日本人では米国で戦っている松坂大輔、和田毅、田澤純一、藤川球児といった投手たちが肘を痛めて、この手術を受けた。また、日本国内を主戦場にする選手たちにおいても例は多く、投手では桑田真澄氏をはじめ、現在リハビリを経て1軍のマウンドを目指している館山昌平(ヤクルト)、久保裕也(巨人)らも経験している。肩や肘は野球選手にとって消耗品であり、今後の野球人生を考えれば、仕方のない決断だったのだろう。
ただ、肘にメスを入れるとはいえ、そこまで悲観的になる必要はない。リハビリ生活は長いが、腱が強くなった分、球速が2、3キロアップすると言われている。また、以前は成功率が1パーセントほどだった時期もあるが、今ではほとんどが成功し、選手たちも続々と復活を遂げている。
加えて、松坂や和田、藤川、久保、館山らの場合は、同年代の投手たちがそろってトミー・ジョン手術を受けたことも彼らの中で支えになっていた。身近な選手が経験している分、この手術がどのようなものなのか、回復までの期間やリハビリの内容などの情報を共有でき、復帰への糧としている。彼らの完全復活も間近とされている。栄光も苦労も知る男たちがそれを力に変えてマウンドに立つ姿は、野球ファンにとって大きな楽しみの一つでもある。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count