3年後の世界一奪還へ 侍ジャパン・小久保監督へと受け継がれる王貞治氏の教えとは
敗戦に対し素直に悔しさを表し、負けることを恥じた
こんなこともあった。小久保監督が入団した当時の王ホークスはBクラスの常連だった。帰りのバスに卵をぶつけられたこともあった。選手たちは憤慨したが、王監督は違った。
「ああいうファンを勝って喜ばせよう」
ファンが敗戦に対して熱くなってくれるのは、チームをそれだけ愛してくれている証。勝てばその分、いやそれ以上に熱い思いをぶつけてくれるはずだと選手たちに力説した。選手の誰もが「懐の大きい監督だ……」と思ったという。
王監督はファンを常に大事にし、一番に考えた。リーグを制し、日本一にまでたどり着いて常勝軍団になったとき、九州のファンは一つになった。それが契機となり、今では観客動員でも屈指の人気球団となった。
また、王監督は負けることに対して悔しさを思い切り表す監督でもあった。敗戦後は必ずミーティングを行った。凡退した打者、降板する投手がベンチに引き揚げてくる際の態度が気にくわなく映ったこともあるという。
「戻ってくる姿が淡々としすぎてはいないか。やられたやつらの姿ではない。君たちは勝つための準備をした。相手も準備した。準備と準備の戦いで負けたんだ。悔しくないのか。プロとして恥ずかしいことだ」
ある日のミーティングから意識改革は始まった。負けたことに素直に悔しさを表し、負けることを恥じた。小久保監督は若手だったこの頃、チームが変わっていく様子を肌で感じ取っていた。
若くして指揮官となった小久保監督を待ち受ける壁は高く、国民からの期待値も大きい。五輪出場経験もあるため、アマチュア界との連携の手腕も求められている。だが、それらの期待に応えられるだけの経験を、小久保監督自身が持っている。王監督の教えも、侍ジャパンを率いるにあたり、大きく生かされるはず。チームの強化は着々と進んでいる。小久保監督はその手腕によって、きっと世界一の称号を取り返してくれることだろう。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count