“2人のデービッド”の和解は困難か オルティスとプライスの「全面戦争」に見る世代間の違い
知性でいなすニュースクール世代のプライス
一方のプライスは、メジャー7年目とはいえ28歳。「ニュースクール」と呼ばれる新世代派に属する。時には、感情を表に出すこともあるが、どちらかと言えば、理論で事象を説明しようとするタイプ。フォーブス誌の全米大学ランキングでも上位に入るヴァンダービルト大学の卒業生だけに、野球選手らしからぬ難しい単語や表現を使うことがままある(知性派で鳴らすマドン監督の影響という声もあるが)。
時には、知性をひけらかす「smart ass」と勘違いされることもあるが、4人退場騒動があった翌日のプライスの発言は、まさに最たる例だった。
「誰も、野球というスポーツより大きな存在にはなれない。だけど、彼(オルティス)は時々野球そのものよりも自分が大きな存在のように振る舞うことがある。だけど、そんなことはあり得ない。もちろん、ビッグパピに対して計り知れない敬意を払っている。おそらく、史上最高のDHだろうし、そういう人物は尊敬されるべきだ」
さらに、2人の間に生まれた個人的な遺恨を「war(戦争)」という単語を使って表現したオルティスを、皮肉タップリにいなすパフォーマンスを見せた。
「これはスポーツなんだ。この国には、男女の兵士がいる。彼らは、平和のために、そして本当の戦争が起きた時に、国民が安全でいられるように、日々戦ってくれている。だからこそ、あの言葉は受け入れられない。これは決して戦争なんかじゃない。自分たちがプレーしているスポーツだ。もちろん、時には熱い戦いになることもある。でも、本当の戦争と比べるなんて、言葉の選択を誤ったとしか思えないね」
感情をむき出しにするオールドスクールと、知性でいなして論点をすり替えるニュースクール。どうやら世代間の闘争は、平行線をたどりそうだ。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。