自身過去最低の与四球率2.68にリーグワーストの10敗 涌井秀章に復活の可能性はあるのか

2009年の沢村賞投手はポテンシャルを再度発揮させられるか

 飯田氏は続ける。

「ボール自体はまったく悪くありません。というより、ひとつひとつのボールを見れば、凄く良いボールも多いです。この試合も、立ち上がりは比較的良い内容でピッチングを組み立てられていました。特に右打者へのシュートは、コースに決まれば“絶対に打てないな”と思わせるだけの質があります。しかし、余りにも丁寧に投げようとするあまり、少しずつコースが外れてカウントを崩していく。成績が出ていないことが、必要以上に慎重なピッチングに繋がり、それが結果的に涌井の持ち味である制球力を乱すことに繋がっているのではと感じます」

 結局涌井は古巣の西武から返り討ちに遭い、リーグワーストの10敗目(日ハム・メンドーサと並ぶ)を喫してしまった。

 ボール自体は悪くないが、結果が出せない状況を、涌井はどう切り抜けていけばいいのだろうか。飯田氏は、メンタル面への投げかけをした。

「今季の涌井を見ていると、投げていて覇気を感じられないんです。もともとポーカーフェイスのピッチャーであることに間違いは無いですが、どこか淡々と投げている印象が強く残ります。“よし行くぞ! 勝ってやるぞ!”という分かりやすい気持ちが、観ている側に伝わってこない。鬼気迫るような表情、打ち取ったときに感情が表に出るようなポーズなど、もう少し気持ちを前面に押し出してもいいのかな、と考えています。

 涌井自身、思うように行かなくて歯がゆい気持ちはあると思いますが、自分が置かれている状況を考えても、もっと積極的に、攻めのピッチングを続けて行かなければなりません。ボール自体は本当に良いボールが行ってますから、積極的にストライクゾーンで勝負できるようになれば、結果はついてくると思います」

 ソフトバンクが独走しているパ・リーグだが、4位千葉ロッテと3位日本ハムとのゲーム差は2.5。クライマックスステージへの出場は、可能性が十分に残されている。終盤戦へ向けて、千葉ロッテの反攻に涌井の力は絶対に必要だ。2009年の沢村賞投手は、自らのポテンシャルを再度発揮させることはできるのだろうか。

【了】

飯田哲也プロフィール

スポーツコメンテーター。1968年東京都出身。1987年に捕手としてヤクルトスワローズに入団、主に外野手としてヤクルトの1番バッターを長く務めた。2005年からは2年間楽天イーグルスに在籍。2006年に現役を引退すると、古巣ヤクルトで2013年まで守備・走塁コーチを務めた。
飯田哲也オフィシャルブログ

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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