東海大四・西嶋の超スローカーブはなぜ効果があったのか 高校球界屈指の強力打線を封じられたワケ

どよめきを生み、球場を味方につけた超スローカーブ

 超スローカーブがあることで、打者は「また来るかもしれない」と思い、タイミングを少し早くとる。しかし、そこで直球を投げられるとフォームを崩し、振り遅れる。また、2種類の遅いボールを狙っても、なかなか手元にこないため、待ちきれなくて前に出てしまい、泳がされる。このようなパターンで軸回転のスイングを封じていたのだった。

 内角、外角のコントロールで左右のタイミング、スローカーブで前後のタイミングをずらした。大脇監督は「対角線上の配球で勝負ができた」と狙い通りのピッチングだったことを明かしている。

 大脇監督は現役時代はキャッチャーだった。捕手としての視点でもバッテリーに助言をし、この勝利に貢献した。監督は福岡大会を力強いバッティングで勝ってきた九州国際大付属の試合のVTRをさかのぼって見てきた。試合中は、西嶋の投球に苦しむ相手打線を見て「これまでのように思い通りにできていないな」と相手の焦りも追い風となったことを実感していた。

 もちろん、相手は優勝候補。常に優位な立場で試合を進め、6-1と5点のリードすることができたが「最後のアウトを取るまでは、何が起こるかわからない。簡単には終わらない」と気を引き締めながら采配を振るっていた。西嶋はその期待に応えて、見事な投球を見せた。

 どよめきを生み、球場を味方につけた超スローカーブ。大脇監督は言った。

「大きな体の強力な打線に、甲子園の大観衆。その中で、あんな球を投げられる。しかも何球も。すごい度胸ですよ。大したもんですよ。本人も燃えていたんでしょう」

 九州国際大付属打線は打ち勝ってきたチームだが、大振りが目立った。終盤になるにつれて何も攻略の糸口が見出せなかったという側面もある。だが、東海大四がその試合展開を引き寄せることができた要因の一つには、間違いなく西嶋の“強心臓”があった。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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