岩隈久志が見せる職人技 “隠れたメジャー記録”にあと「1」に迫る

なぜ岩隈は走者を封じることができるのか

 盗塁阻止は一般的に捕手の肩が重要な役割を担うが、特集では岩隈の女房役のマイク・ズニーノ捕手が盗塁阻止に関して凡庸であることを指摘。岩隈とのコンビでは8回の盗塁を全て阻止しているが、他の投手の場合は61回で49回も成功を許している。今季、16試合連続ハイクオリティスタート(7回以上を自責2以内)というメジャー記録を樹立した「キング」ことフェリックス・ヘルナンデス投手の登板時ですら、19回中16回も盗塁を許しているという。

 なぜ、岩隈は走者を封じることができるのか。

 実は、岩隈の「走者を走らせない技術」には、日本時代から定評があった。2006~2008年に楽天で投手コーチを務めていた元広島の紀藤真琴氏は当時、岩隈のクイックモーションの卓越さについてこう語っていた。

「すごく速いよね。あれではランナーは走れない」

 元名捕手であり、名監督だった野村克也氏がクイックモーションを考案して以来、日本では「盗塁は捕手より投手の責任が大きい」とする見方がある。特に、クイックモーションが日本ほど重視されていないメジャーにおいて、岩隈の盗塁阻止技術が超一級品であることは間違いない。

 巧みなクイックモーションには、まずは走者をベースに釘付けにする効果があり、それでも盗塁を試みられた場合には、チャレンジャーを二塁で仕留める確率が高まる。当然、ズニーノの好送球がなければ実現しない記録ではあるが、岩隈の高い技術が盗塁を阻止する確率を高めていることも間違いない。「キング」とともにマリナーズをプレーオフ進出へと牽引する岩隈の安定感の陰には、相手に攻撃の選択肢を限定させる職人技が存在する。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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