三重県勢が59年ぶりの決勝進出 三重の快進撃の裏に中村監督の手腕あり
楽天・則本も育てた中村監督の指導理論
同監督は2012年まで三重中京大の監督を務めたが、学校が閉校。大学では楽天の則本昂大を育てた。閉校となった後は同じグループ内の三重高校のコーチに就任していた。
全国的に強くない三重県。監督はまず選手に勝つ意識を注入した。全国で勝つチームを目指すためにやったことは守備の強化だ。
三重は打撃のチームに見えるが「うちのチームは守備を8割やった」と守りからリズムを作ることを掲げた。それが今井や投手の投球の幅が広がることにつながった。
エース今井は力いっぱいに投げるフォームから、打たせてとる形に変わった。この試合でもショートの宇都宮やファーストの西岡がファインプレーを見せて、盛り立てた。今井は「バックを信頼して投げました。打たせてとることができたのが大きいです」。初戦の広陵戦だけは延長に入り、リリーフを仰いだ。それでも9回を投げた。2戦目以降はすべて完投で710球を投げ抜いた。
中村監督は則本に教えたように、今井に対して体の近くを通るような腕の使い方を指導。中村監督は「そうすることで、力が逃げずにボールに伝わる。無駄な力が入らない」と話す。フォームに力が入りすぎず、効率のいい力の入れ方になり、ボールにキレが増した。「則本投法」といえるピッチングで、一気に才能を開花させた。
中村監督は選手とのスキンシップも欠かさない。選手へのマッサージや宿舎での声かけ。「出番があるから準備しておけよ」と控えにも配慮を忘れない。まだ実現できていないが「甲子園ではメンバー全員を使いたい気持ちがあります」と全員野球で優勝旗を持ち帰ることを夢見ている。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count