地元メディアからも「来季も残すべき」との声が上がり始めた和田毅 ベテラン左腕の好投を支えるものとは
にわかに浮上し始めた和田のカブス残留の話題
さて、ここへきて、にわかに浮上し始めたのが、和田のカブス残留という話題だ。日本人選手の契約問題については、通常地元メディアよりも先に日本メディアがテーマにするものだが、すでに来季に目が向いているシカゴのメディアは「来季も和田を残すべき」と意見し始めた。
「和田はチームの長期構想に入るのか?」と質問されたレンテリア監督は「今言えるのは、彼はとてもいい投球を続けているということ。いつかはしなければならない判断だが、彼自身いい状況を切り拓きつつある」と前向きな発言をしている。
もちろん、チームの人事権を握るのはGMだ。特に、カブスの場合はエプスタイン球団社長がほぼ全権を握っている。監督の言葉を鵜呑みにすることはできないが、チームが和田の働きを高く評価しているのは間違いない。たとえFA市場に出たとしても、今の成績ならば間違いなくメジャー契約を手に入れられるはずだ。
監督の言葉を伝え聞いた和田は、素直に「そういう風に言ってもらえればうれしいです」と笑顔を浮かべた。だが、残り5~6試合であろう先発試合で、しっかりとした数字を残せなければ、まったく意味のないことであることも承知している。
「逆にそういう風に言ってもらえることが、自分にとっては望みなので、1戦1戦いい結果をこれからも残していきたいと思います。やっぱり最後にボロボロにやられたら、(再契約は)どうしようかなって考えてしまうと思うので、いい状態を保ってシーズンの終わりまでいい結果を残し続けることが、自分にとっては今年の目標ですね」
ここまで少しずつ結果を積み上げてきても、毎試合「これが最後の登板になるかもしれない」という危機感は持ち続けているという。
「メジャーはそこまで甘くない。そう思って、1戦1戦、後がないという状態で戦っているのが、今はいい結果につながっているのかなと思います」
いい緊張感で気を引き締めながら、実力を証明し続ける挑戦に臨む。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。