2年ぶり10勝へ 成瀬善久が胸に秘める正妻・里崎智也への思い

「率直にいうとさみしい」

 ロッテのエースになった成瀬善久が初勝利を挙げたのは2006年のことだった。横浜高校からロッテに2003年のドラフト6巡目で入団し、これまで5度、2桁勝利をマーク。今日、2年ぶりの10勝をかけて日本ハム戦に先発する。

 栄光の隣にはいつも里崎智也という捕手がいた。成瀬にとっての正妻が今年限りで引退を表明した。成瀬はしんみりと言った。

「率直にいうと、さみしいです。僕は9割、これまで里崎さんとバッテリーを組んできましたから」

 2006年のデビューから3試合は橋本将(元ロッテ捕手)がマスクをかぶった。田中雅や金沢といった捕手が数試合、ボールを受けているが、成瀬の登板試合の8~9割が里崎とのコンビだった。来年度にはおそらく成瀬は通算100勝に到達するだろう。しかし、一緒に歩んできた先輩にボールを受けてもらうことはもうない。

 引退を決めた後、球場内で会った。

「(里崎さん)何してんすか? みたいな感じで声をかけました」

 成瀬は実感があまりなかった。まだまだ現役をやれると思っていたからだ。マスク越しの里崎に引っ張られて、ここまでやってこれた。たくさんのことを教わった。里崎と会話しながら、思い出すことも多い。引退は、どこか受け入れたくない現実だった。

 4月25日の日本ハム戦で今季唯一の完投勝利。その試合が里崎と最後のバッテリーになった。シーズン後半は、江村や田村ら自分よりも若い捕手とのバッテリー。成瀬の投球の引き出しの多さが、若い捕手たちの経験不足を補っていた。

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