WSの熱戦の裏でチーム改革に動き出すメジャー各球団 ナ・リーグ西地区に大変革の予感
最も大きな変化が予想される今季西地区覇者のドジャース
編成部門の最高責任者トニー・ラルーサ氏(元カージナルス監督)の下、ダイヤモンドバックスの新GMに就任したのがデーブ・ステュワート氏。メジャーで15年間を過ごした投手で、ドジャース(1981)、アスレチックス(1989)、ブルージェイズ(1993)の3チームで世界一となり、1989年にはワールドシリーズMVPとなった輝かしい経歴を持つ。
1995年に引退後、GMになるという目標を持って、すぐに当時アスレチックスのGMだったサンディ・アルダーソン氏(現メッツGM)に弟子入り。フロントオフィス入りしたり、投手コーチに就任したり、球団経営をいろいろな角度から学んだ末に、2004年に代理人に転身。マット・ケンプ、チャド・ビリンズリー(共にドジャース)、クリス・カーター(アストロズ)らがクライアントだったが、今回のGM就任に伴い、代理人業は元チームメイトのデーブ・ヘンダーソンに譲渡した。GMの選定に当たったラルーサ氏はスチュワートGMの多岐にわたる経験を重視したという。今オフにどんな選手補強をするのかに注目してみたい。
そして、最も大きな変化が予想されるのが、西地区優勝を果たしながら地区シリーズで敗退したドジャースだ。
野球編成部門に取締役を新設し、そこへレイズのアンドリュー・フリードマンGMを電撃ヘッドハンティング。長らくGMを務めたネド・コレッティ氏は同職から退き、球団社長/CEOのスタン・カーステン氏のシニアアドバイザーとして球団に残ることになった。10月20日現在、GM職は空位となっているが、今季途中でパドレスのGM職を解かれたジョシュ・バーンズ氏の名前が有力候補として挙がっている。
ダイヤモンドバックス、パドレスのGMを歴任したバーンズ氏は、ドラフトでいい人材を集めて、自給自足で戦力を築き上げることに定評のある人物で、その点はフリードマン氏と同じ方針と言える。バーンズ氏の功績が日の目を見なかったのは、これまでの2チームでは予算が限られていたためだ。
今季パドレスの選手年俸総額が約9000万ドルだったのに対し、ドジャースは約2・5倍に当たる2億3500万ドルだった。低予算で知られるレイズやパドレスでやりくししてきたフリードマン氏やバーンズ氏が、資金に余裕のあるチームを任されたら、非常に面白い展開を見せそうな予感がする。
5年で3度目の世界一を狙うジャイアンツの脅威となるのは、一体どのチームなのか。ナ・リーグ西地区各チームはオフの動きから注目して損はないだろう。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。