【山本一郎コラム】今年のクライマックスシリーズはとても楽しめました
シーズントータルでの戦い方との違い
やー、まあどうせ出られないのでスワローズ的にはクライマックスシリーズがどうなろうと関係ないといえばそれまでなんですけどね。例えていえば、クラスで仲の悪い奴の両親が離婚するかどうかって話が伝わってきたような感じ。巨人も善戦してた割にはあっさり4連敗とか、マジお疲れさんです。ヤクルトでもやらなさそうな凄い連敗を大一番でやってくれて、でも巨人ナインは相当真剣に取り組んでて、人間の機微というか、最善の努力をしても最高の結果が得られるわけではないということを証明してくれました。まさに理系の研究室で毎日起きている出来事なんだろうと思いますけれども。
まあ、CS勝てなかった巨人なんてヤクルトみたいなもんですよ。日本シリーズ出られないわけですから。同じことですよね、144試合戦って、かたや優勝、かたや最下位であり、かけてるお金も段違い、名将原辰徳率いる大正義読売ジャイアンツとFA戦線でテーブルの上にV字のミルミル並べて玉砕待ったなしの東京ヤクルトスワローズを見て「あれこそニッポンのサブウェイシリーズ(と言いつつ地上を走る総武線)」とか真面目に語る人は何か脳味噌に不足がある人だと思うんです。
ただ、日本シリーズに出られなかったセリーグの球団という意味では同列です。残念でしたね巨人ファンの皆さん、はっはっは。何というか、最後の最後だけ坂本と長野が少しだけ活躍しましたけれども、あの絶対打たないオーラというのは何だったのでしょうか。ヤクルトでいえばまるで志田と野口が一番三番でスタメンしているようなものです。中継で観ていて、あそこまで打つ気配のない選手がクライマックスで上位打線を打っているというのは不思議でしょうがありませんでした。さすがに原監督も手を打って、最後だけは打順を入れ替えていましたけれども、主軸のセペダ、坂本、長野、阿部、セペダ、ロペス、セペダといったところが肝心なところでさっぱりなのではやはり駄目なんだと思いました。
一方、阪神タイガースは何か妙に強かったですね。シーズン後半の糞のような打線と微妙極まりない先発、そして情けない采配を連発していた和田豊監督によって織り成される失速タイガースとは打って変わって、あれは猛虎つーか蒙古襲来でした。守備は堅いわ、いいところでゴメス打つわ、先発はちゃんと計算立つ程度に踏ん張るわ、最後はしっかり抑えるわ。
こうやってみると、シーズントータルでの戦い方と、短期決戦とはまったく違うんだなあと思い知るわけであります。今年のシーズンだって、決して巨人が突出して強かったとはいえないわけなんですけれども、それでも王者の風格ぐらいは見せるかと思っていました。しかしなんですか、あのロッテより弱い状態は。言われてみればポストシーズンのMLBでも、我らがオークランドアスレチックスはVやねん状態のシーズンが終わって何とかワイルドカードでワンナイトやったらカンザスシティごときにひっくり返されて。
そのカンザスシティが、超大正義LAエンジェルスもスイープ勝ち、ついでにボルチモアオリオールズもスイープ勝ちとか、やばいでしょ。そのぐらい、いまの阪神には勢いがあるということなんでしょうか。
これで阪神がコロッとソフトバンクに負けたりすると、これはこれで暴動が発生するのかもしれませんけれども、一人のヤクルトファンとして、今年のクライマックスシリーズは他人事ながらとても楽しめました。阪神も巨人もありがとうございました。広島も。
ああー、来シーズン早く始まらないかな。
【了】
山本一郎●文 text by Ichiro Yamamoto
ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。1973年、東京都生まれ。
著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。